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正月の供え物

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 正月の行事食というと餅や雑煮が思い浮かぶが、町内の三が日の供え物を調べるとこの間餅を食べない家もある。ここでは、各家の正月の供え物をみてみたい。なお、餅を食べない事例については、次項の「餅なし正月と家例」で紹介する。
 東のある家では、三が日の朝は雑煮、夜はご飯を年男が供える。雑煮には芋と大根などを入れるが、神様の供え物には臭い物は上げない。七日をソウジマイといい、三が日上げた雑煮はこの日に下げる。これを年男がなべで煮て食べる家もある。供え物を上げるのは、大神宮様・床の間・オエビス様(恵比寿様)・荒神様・井戸神様・稲荷様(屋敷神様)・仏様などである。
 逆井のある家では、一日は当家の縁起で神様に雑煮を上げないで、大晦日のけんちん汁とご飯を上げる。二日と三日には雑煮を上げる。これは当家が分家に出た年の正月にこのようなことをしたことに由来するという。雑煮には大根・芋・小松菜を入れて上げる。神様の雑煮には餅を入れないが、作るときは餅を入れて作り、この餅は年男が姫宮神社に参拝に行く前に食べる。なお当家の本家では、正月に年男がススハライで使った篠竹を結わいた杉の下に行って雑煮を食べた。
 辰新田のある家では、三が日の間、神様には年男が朝は雑煮、夜はご飯を上げる。神様に供える雑煮は大根・ニンジン・芋だけで、餅は入れないでオシタシだけさして上げた。ゴホウゼンサマには大根・ニンジン・芋と切り餅を煮たものを三つの器で上げる。家族の者が食べる雑煮には餅を入れる。
 須賀上のある家では、三が日の間、神様には朝は雑煮、夜はご飯を供える。このときには歳神様に供えてから他の神様にも供える。神様に供える雑煮の具には芋・大根・ニンジン・ごぼうを入れる。餅はオソナエが供えてあるので雑煮には入れない。この雑煮を作るなべ・しゃくし・おたまは神様専用の物で暮れのうちに用意した新しいものを使う。以前は神様に供えた物は、三が日が終わると下げて年男がいただいた。