新年のあいさつや年始に親戚一同が集うことをオオバン、ヨリビ(寄り日)、カレイビ(家例日)などという。この日取りは各家で三日、五日などと決まっている。オオバンには、手打ちそば・きんとん・数の子・芋の煮物・ようかん・用水で捕ったフナの甘露煮などの手料理でもてなす。オオバンに来る人は半紙と手拭いを持ってきて、「おめでとうございます。昨年中はお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。……」と新年のあいさつをする。
東のある家では、正月には家ごとに親戚が年始のために集まる日があり、これをオオバンという。当家のオオバンは三日である。このときは新年のあいさつに親戚の者が半紙、手拭いに何かのせてくる。年始のあいさつは「おめでとうございます。昨年はお世話になりました。本年もよろしくお願いいたします」などという。オオバンには、そばを打ち、昼に食べる。このほかには、数の子・昆布巻き・なます・甘煮・きんとん・煮豆・カマボコ・伊達巻きなどの御馳走を用意した。
本田のある家では、「オオバン振る舞い」ともいい、御馳走を用意して親戚を呼んで新年のあいさつを行う。あいさつに行くときには、手拭と半紙を持って行く。オオバンの御馳走には笠原沼で捕れた魚料理を出す。沼で捕ったナマズのてんぷら・フナのアライ・甘露煮などである。シノが終わると田んぼのキリコミ(たんぼの三坪位の沼)にあらかじめ沈めておいた枝に魚が巣を作っている。このキリコミの水を家族でカイテ(干す)、魚をつかまえて盥(たらい)で暮れまで飼っておく。正月の客は「正月には辰新田に行くと、ナマズのてんぷらが食べられる。」と楽しみにしていたという。
内野のある家では、ヨリビ、カレイビといい、御馳走を用意して親戚などを呼んで新年の集いを開く。家によって日が決まっており、当家では五日に行う。このときの御馳走は、そば・きんぴらごぼう・魚の甘露煮・昆布巻き・煮豆・切りイカの煮物などである。魚は秋に笠原沼で捕って、ベンケイに下げておき、正月前に甘露煮にする。当家では、正月のヨリビが来るまではそばを打ってはいけないという禁忌伝承があり、ヨリビがそばの食べ初めの日である。また、昔はミカンが貴重で正月でなければミカンは食べられなかったので、木箱に入ったミカンを買ってヨリビなどに食べた。