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鍬入れ

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 鍬入れは正月一一日に行われる行事で、農作業の所作を行い豊作の祈願を行うものである。この行事は鍬入れ、作入れともいう。内野のある家では、歳神様に供えた松の枝・御散米・餅を持って、アキの方(恵方)にある畑を鍬で三畝さくり、御散米を撒き、松の枝は畑に刺し、残った御散米は持ち帰って昼食に家族で食べる。鍬入れは正月にこれから始まる一年の農作業の無事と豊作を祈る大切な行事であった。この日の昼には鍬入れのときに持っていった御散米の残ったものでご飯を炊き神様に供えたり、家族の者がいただく。このときにご飯ではなく麦飯を炊く家もある。

3-13 鍬入れ(姫宮 N家)

 本田のある家では、一一日にアキの方の畑で作入れを行う。この行事を農家の仕事始めといい、農作物が今年も豊作になるように祈るものである。作入れは畑で畝を一、二本畝をさくり、オソナエを供えてから御散米を撒いて枡に入れ供える。このときの残った御散米は、昼に炊いて神棚に供える。
 逆井のある家では、一一日の朝、農家の仕事始めである鍬入れを行う。鍬入れは麦畑でアキの方を向いて何畝かさくり、御散米を撒いて松の枝を挿す。御散米一升とするめ、松(豊作を待つという意味がある)の枝を膳に供える。鍬入れに用いた御散米の残ったものは、一四日のオニタマを作るときに使う。
 山崎のある家では、一一日にアキの方の畑で、米一升、尾頭付きの魚、餅二個を上げて、鍬で五、七畝さくる。また、水に不足がないように水松(井戸神様に供えた松)を立てる。鍬入れで供えた米の残ったものを持ち帰り、麦と混ぜて炊いて、神棚に供えた(ノリドメシという)。
 辰新田のある家では、一一日の朝、アキの方の畑で鍬入れを行う。一升枡に御散米、煮干しを入れて供えてから肥料として撒き、餅を五かけくらい畑に持っていく。畑では鍬で一間の間隔を二本くらいさくり、御散米とメザシを今年も豊作でありますように撒く。このメザシは肥料として撒くものである。鍬入れで残った御散米は、一五日の小豆粥に入れて食べたり、一六日の小豆飯に入れて食べる。これが米の一年の食べ初めで、これで正月行事が終わる。「鍬入れを早く行うと、その年は一年手がまわる(仕事がはかどる)」という。
 本田のある家では、鍬入れをアキの方の畑で行った。鍬入れには床の間にあげた一升枡の上にオソナエを乗せて畑に持っていった。畝をワセ、ナカ、オクと三畝さくって、米を撒いた。この時に残った米を床の間にあげておき、一五日の小豆粥、一六日の小豆飯を作るときに入れた。
 須賀上のある家では、一一日に農家の仕事始めとして鍬入れを行う。暦でアキの方をみて、御散米を一升と魚を持っていき、鍬で畝をさくる所作を行う。御散米の残ったものは一四日のオミタマ飯と一五日の小豆粥に半分ずつ使う。
 須賀下のある家では、一一日に畑で鍬入れを行う。鍬入れは畑でアキの方に向かい、鍬で二、三畝をさくって、鍬入れの所作を行う。鍬入れには一升枡に米一升と四角い餅を二重ね供える。正月は一日から一〇日まで、夜は米の飯を食べるので、この日が麦飯の食べ初めの日である。