本田のある家では、一四日の晩に仏壇におにぎりを五合の米で作り、二皿に六個ずつ供えた。このおにぎりには柳の枝を一本ずつ刺して供える。
3-14 オニタマサマ(東粂原 K家)
3-15 オニタマサマ(内野 N家)
3-16 オニタマサマ(本田 H家)
西粂原のある家では、一五日にご飯を丸めておにぎりを一六個作り、会席膳に載せてウツギの枝を刺して仏壇を供えた。これをオニタマという。一六日の朝には、このオニタマと一四日に飾ったメダマ団子(繭玉団子)を入れてアズキゲエ(小豆粥)を作る。ニワトコの枝の先を削って四つに割り、アズキゲエの中に入れて米粒をくっ付かせる。米粒が沢山くっつくと豊作だという。これは、せつなくってコメッツブの足りない年はろくにくっ付かないから、そんな水のようなお粥を作るようじゃダメだ。米が沢山入って、コメッツブがいっぱいくっ付くような粥が作れるよう精を出せ、ということであるという。
逆井のある家では、一四日の朝、仏壇にご飯を握ったオニタマを供える。オニタマの数は四個を四列に並べたもので一六個上げる。このオニタマにウツギの枝を刺す。オニタマはぼた餅の作り始めで、これより先にぼた餅を作ってはいけないという。オニタマに刺したウツギの枝を抜いて、その年の作物の出来を占うことも行われた。ウツギの枝の先にご飯が粘ってたくさん付くと、その年は綿がたくさん穫れるという。また、ウツギの枝の先がつるつるとしてご飯が全然付かないと、今年は綿が違い(不作)だという。さらに、このウツギを畑に挿すと、モグラの頭に刺さって、モグラが死ぬからモグラが這い出さないという。オニタマは終わると下げて焼いて食べる。
辰新田のある家では、一四日に仏壇に五合の米で一二個のオンタマを作って供える。オンタマとはご飯をおにぎりのように握ったもので、ウツギの枝をよく洗って一五センチくらいに切った先を削って刺したものである。一四日に神様には繭玉団子を供え、仏壇にはオンタマを供えるので、この日までは丸い物は作ってはいけないという。オンタマを下げるのは一四日の夜で、焼いて醤油をかけて食べる。
須賀上のある家では、一四日を丸い物の作り始めといい、仏様には一六個のオミタマを作り、半紙の上に置かれた重箱に入れて供える。オミタマには初芽の立つものとしてニワトコの枝を刺す。このオミタマを作るまではご飯を丸めたものを作ってはいけないという。