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恵比寿講

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 正月二〇日と一一月二〇日の年二回、恵比寿講・エビスコ・オイベッサマが行われる。恵比寿講には、普段は台所の戸棚などに祀られている恵比寿・大黒様を神棚から出して、床の間のちゃぶ台や小机にお祀りする。正月の恵比寿講に恵比寿・大黒様が働きに出掛け、秋の恵比寿講に稼いで帰って来るという。そこで、正月の恵比寿講を「商人の恵比寿講」、秋の恵比寿講を「農家の恵比寿講」ともいう。正月二〇日の恵比寿講は、商人の恵比寿講なので農家は行わないという家もある。(秋の恵比寿講は、第五節「秋から冬の行事」247頁の項を参照)
 辰新田のある家では、正月二〇日を商人の恵比寿講、一一月二〇日を農家の恵比寿講という。正月二〇日の恵比寿講はオソナエクズシともいい、一四日のトリマチ正月で下げたオソナエを一年間無事に過ごせるようにこの日の朝雑煮に入れて食べる。
 須賀上のある家では、正月二〇日と一一月二〇日に恵比寿講が行われる。正月の恵比寿講は商人の祝い(商人の恵比寿講)、秋の恵比寿講を農家の恵比寿講という。秋の恵比寿講はその年の収穫が終わった祝いでもある。恵比寿・大黒様は普段、台所の高い所のお宮に祀られているが、恵比寿講にはちゃぶ台の上にお宮を出してお祀りする。供え物はご飯、けんちん汁、尾頭付きの魚としてさんまなどを二膳供える。恵比寿講の御馳走は「オエビス様に盛ったようだ」というようにすべての物を高盛りにして供える。供え物は家族の者が「○○を何万両で買います」と言っていただく。恵比寿講にお金や財布を桝に入れて供えると、お金が殖えるという。また、近所で捕れたフナを水を張ったどんぶりの中に入れたカケブナを供える。カケブナは恵比寿講が終わると井戸の中に放した。この日には馬のハヨナワナイを馬結いの家と一緒に行い、ハヨナワ(牛の代掻きで使う縄)をなった。
 西粂原のある家では、恵比寿講の日には馬を引くのに用いるハヨナワを近所の人と作った。三本の縄をよって作るので大変だった。これは馬を農耕に使っていたころまでの行事である。