春分の日は太陽が真東から昇り真西に沈むため、西方極楽浄土の信仰と結びついて、その日を中心とする彼岸には先祖の供養のためさまざまな行事が行われる。
金原では、春と秋の彼岸の入りの日に百万遍が行われる。この日は午前中に千地蔵参りという行事がある。彼岸前の半年間に亡くなった人の供養が行われ、地区内および近隣の墓地を回り、小さな千枚の札を一枚ずつ墓地などにある地蔵様に貼るというものである。午後になると百万遍が行われ、三〇人くらいの人が輪になり、四八〇個の数珠玉からなる大きな数珠を、「ナンマイダー(南無阿弥陀仏)」と唱えながら五〇回まわす。輪の内には鉦を叩いて拍子を取る人が入る。また、数珠を回している人の中には、マッチ棒で回数を数える人もいる。回し終わると人々は数珠で体の悪いところをなぞる。そうすると痛みがとれるという。その後、持ち寄った料理を飲食して行事は終了する。
百万遍は金原地区のほかに、川島、姫宮、須賀上でも行われている。しかし、これらの地区の百万遍は四月から八月にかけて行われ、お獅子様の行事と同様に疫病除け、悪疫退散を目的に行うと伝えられている。