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五月の節供

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 五月五日の五月の節供は、三月三日の三月の節供、九月一日の八朔の節供とともに三節供の一つである。また、この節供は端午の節供、男の節供、菖蒲の節供とも呼ばれる。節供には、男子のいる家庭には親元から家紋の染められた幟(のぼり)や武者絵を描いた絵幟、三色や五色の吹流し、武者人形が贈られ、祝いをいただいた親戚などには柏餅やアンビン餅などをお返しに配った。

3-29 五月節供(資料館季節展示)

 五月節供には菖蒲とよもぎを束ねたものを三束作って、母屋や納屋などの軒下や入り口、屋根などに挿した。また、この日の晩に菖蒲湯に入ると、「一年間無事に過ごせる」「健康にいい」「菖蒲で体を洗うと長生きできる」「菖蒲を頭に巻くといい」などという。このようにこの五月の節供の行事には菖蒲やよもぎを用いた疫病よけの意味も含まれている。
 逆井のある家では、五月五日は男児の節供で五月の節供という。男児のいる家では鯉幟(こいのぼり)を立てる。矢車・吹き流し・真鯉・緋鯉は親元や親戚が節供の祝いに贈ってくれる。また、親元では子供に鯉幟とあわせを贈る家もある。鯉幟などを祝ってくれた家には、節供のお返しに柏餅を配った。節供には軒下に菖蒲とよもぎを三本ずつ挿した。また、この日は風呂に菖蒲を入れた菖蒲湯に入ると一年間無事に過ごせるという。
 辰新田のある家では、五月の節供には男児のいる家では親元や親戚から贈られた吹き流し・矢車・鯉幟を飾った。節供には親元や親戚を呼んだ。この日には、母屋・納屋・仕事場の軒に菖蒲一本とよもぎ二本を束ねて挿す。夜には風呂に菖蒲を入れた菖蒲湯に入る。また、この日頭に菖蒲を巻くと頭を患わないという。
 須賀上のある家では、五月節供は男児のいる家には親元や仲人から吹き流しや鯉幟が贈られる。これらの飾りは四月中に立てておく。五月節供には柏餅や紅白のトリノコ餅などを搗いて配った。この日には菖蒲とよもぎを束ねたものを母屋や納屋などの屋根の三か所に挿した。これは昔、神功皇后が船で朝鮮に行くときに、菖蒲とよもぎで葺いた屋根の下でお産をしたら、丈夫な子供を出産した故事にちなむものである。また、夜は菖蒲を風呂に入れた菖蒲湯に入ると健康に過ごせるという。
 須賀下のある家では、男児の初節供には親元や親戚から贈られた鯉棹(こいざお)・吹き流し・緋鯉や真鯉の鯉幟を立てた。鯉幟の外に内飾りといって、武者人形・鍾馗様の人形・兜などを飾る家もある。初節供には鯉幟や弓破魔などの祝い物を贈ってくれた家には柏餅とするめ、カツオ節などを配った。