短冊や色紙で飾った七夕飾りは、雄雌二頭の真菰で作った馬を飾った中央に立てる。中島では、七夕の馬は子供の魔除けに作るという。短冊には「七夕」「天の川」「七夕の天の川」などと書いたが、現在ではさまざまな願い事を書いて飾ると願い事が叶うという。このときには、芋の葉に溜まった朝露を採ってきて硯(すずり)に入れ、墨で字を書くと上手に書けるという。
逆井のある家では、真菰で雌雄の馬を作って、笹飾りを中央にして飾り付ける。向かって右の馬に青い色紙を、左の馬に赤い色紙を胴の部分に巻いた。この日の晩、笹飾りと真菰の馬の前に小麦まんじゅうを供える。
内野のある家では、六日の夕方から笹飾りや真菰の馬の飾り付けを行う。七夕の馬は雄雌二頭で立髪や胴に巻く色紙が異なる。二頭の馬は入り口の門の脇に横に渡した竹の上に向かい合うようにして飾る。この二頭の馬の中央に笹飾りを立てる。笹飾りには色紙で作った短冊が飾られる。この短冊に願い事を書くときに、芋の葉に溜まった朝露をとってきて、字を書くと上手になるといわれた。このときには「天の川」の文字や願い事を書く。
3-33 真菰の馬作り(金原 N家)
3-34 真菰の馬(中須 H家)
本田のある家では、六日に真菰で七夕の馬を作って笹飾りと一緒に飾った。馬に鞍と称して雄が青、雌が赤の色紙を胴の部分に巻いた。立髪の本数が雄と雌では異なる。七日の朝は小麦まんじゅう、夕方にはうどんを上げる。七夕が終わると笹飾りと一頭の馬は川に流し、もう一頭の馬は屋根に上げた。また、このときに子供たちが引いて遊ぶ真菰の馬を別に作った。
西粂原のある家では、短冊に書くときは芋の露を硯に入れて作った墨で書いた。短冊に書く文句は、昔から決まったものがあり、
「七夕の 天の川 とをきわたりに あらね供 君がふなでを 年にこそまで ほ志まつる にのとぼしび かじのはに いくあきかづの つゆのたまつづさ」と書いた。
金原のある家では、短冊に「七夕のとわたるふねのかじのはにいくあきかきつつゆの玉づさ」と書いた。
3-35 七夕飾り(須賀地区)
3-36 七夕飾り(東 S家)