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盆棚

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 お盆様を迎えるにあたって、正月の歳神棚のように普段仏様を祀っている仏壇とは別に、特別な棚(盆棚)を設ける家と仏壇に飾り付ける家がある。盆棚を設ける家では、一三日の午前中か午後の早い時間に盆棚を飾り付ける。盆棚を飾る部屋は、家によりさまざまであり、客がお参りしやすいように入り口に近い部屋、座敷の部屋の庭に面した場所、仏壇を祀っている一番奥の部屋、ヒロマなどに飾る。

3-42 盆棚(川島 O家)


3-42 盆棚(内野 N家)


3-42 盆棚(本田 H家)


3-42 盆棚(本田 K家)

 盆棚の作り方は大工さんに作ってもらった組立式の棚を用いる家や麺板(うどんやそばを打つ台)を台にして、障子などを両側に立てて飾り付ける方法がある。盆棚の比較的古い方法での作り方の一例をあげると、盆棚の台には四斗樽を置き、その上に麺板や戸板を置く。麺板や戸板の上には、真菰で編んだござを敷き、両側に障子を立てて隅に笹竹を飾る。棚の正面上部には、縄を張り、ほおずきや色紙を切って下げた。盆棚の奥や側面には掛け軸(十三仏・善光寺・弘法大師など)を吊るし、仏壇に安置している位牌を出して並べる。
 このように盆棚には真菰で編んだござの上に、位牌のほかに仏壇の本尊様・灯明・線香・線香立て・お盆様の膳・水を入れた器・みそはぎを束ねたものなどが置かれる。このみそはぎを、水に浸して二、三回手を動かす。さらに、家で採れた野菜・果物・なす・きゅうりの馬などを供える。盆棚の下には、無縁様として棚の上に上がれない先祖様を祀り、盆棚と同じように三度三度の供え物をあげる。家によってこの無縁様の呼び方や祀り方が異なり、ショウレイサマ(精霊様)・無縁様・結婚しないで亡くなった先祖様などという。
 須賀上のある家では、盆棚を一三日の午前中に客間の南側に作る。盆棚には仏壇から先祖の位牌、十三仏など掛け軸を出して飾る。盆棚の台には四斗樽を用い、その上にそば打ち台を乗せてござを敷く。このござは毎年新しいものを用意する。棚の両側には障子を立て、そこに篠笹を飾り付ける。盆棚の前面の上部にはコデナワを張り、そこに色紙を下げる。
 須賀下のある家では、盆棚は一三日の午前中に作る。盆棚は部屋の角に障子を両脇に立て、四斗樽の上に三尺の板を乗せて台を作り、真菰で編んだ盆ござの上に供え物を上げる。この真菰は七夕の馬を作るとき一緒に用意する。仏様は新しいものが好きなので、現在では新しいござを買って敷く。障子の手前の隅には笹を立てかける。笹の上方に縄をかけ、棚の前方にはほおずき、色紙を吊るす。盆棚には先祖の位牌を並べ、本尊様の掛け軸を掛ける。盆棚の前方の下には真菰のござの上に新しいござを無縁仏のためにかけた。棚の上には上れない無縁仏には、芋の葉に供え物を上げる。また、「無縁仏はお茶も飲めないのだから、盆棚から下げたお茶は軒に撒け」という。