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迎え盆

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 お盆様を盆棚に迎えることを迎え盆という。一三日の夕方に迎えに行く家が多いが、一般的に「迎えは早く、送りはゆっくり」という。一三日の午前中に盆棚を飾り、午後三時ころから夕方にかけて迎えに行く家が多い。迎え盆には家の者が風呂に入って着替えてから墓地に行って、石塔に線香をあげ、その火で提灯に火を移して家まで迎える。家に入るとき玄関から入る家と縁側から上がる家がある。縁側から上がる家では、このときに縁先にお盆様が足を洗う水をどんぶりに入れて用意しておく。お盆様を盆棚に迎えると、線香を上げすぐにお茶を供える。

3-43 迎え盆(川島 H家)

 須賀上のある家では、お盆様を迎えるとヒキ茶を盆棚に供える。ヒキ茶とはハカナギのときにお寺からもらってきた粉茶のことで、送り盆のときと半分ずつにして上げる。
 須賀下のある家では、迎え盆で墓地から家に着くと縁側から座敷に上がり「よくおいでなさいました」と、提灯の火を盆棚の行灯に移す。お盆様を迎えたら、盆棚にお茶を上げる。
 東のある家では、一三日に盆棚を作ってから、風呂に入りこざっぱりして、午後三時ころにお盆様を迎えに行く。かつては浴衣を着て迎えに行った。墓地ではお水・御散米を上げて線香をつけ、その火で定紋の提灯のロウソクに火をつける。家に着くと縁側から上がり、提灯の火を盆棚の行灯に移す。お盆様を迎えたらすぐにお茶を上げる。盆棚には家で採れたものや果物を上げる。お盆様を迎えると芋の葉を二枚採ってきて、浅いどんぶりを二つ置き、一つにはナスを賽の目に切って入れる。この日の夕食は、家族の者は廊下で食べた。
 逆井のある家では、寺が遠いので以前は屋敷のケイド(入口)の角で、オガラを刺して足にしたきゅうりとなすの馬を作ってお盆様をお迎えした。お盆様を送るときもケイドの角で行った。その後は、自転車で寺まで行くようになった。しかし、自転車では提灯の火が危ないので、提灯には明かりを灯さずにお盆様を迎え、後をついてきてもらう。近年は自動車で行くようになったので、提灯に火を灯して迎えることができるようになった。家には廊下から上がって、提灯の火を盆棚の行灯に移す。
 内野のある家では、一三日の午後三時ころ盆棚を飾り終わってから、お墓までお盆様を迎えに行く。このときには「農家で昼に風呂に入るのはお盆だけ」というように、風呂に入ってこざっぱりした服装で迎えに行く。お墓で本尊様のオアカシ(灯明)を、家から持って行ったロウソクに移して、提灯でお盆様を迎える。家に着くと縁側から上がって、盆棚の提灯の火を移す。