町内では、初午に前日の晩から子供たちがお籠りをする行事が盛んに行われてきた。この行事は、町内全域の地区でほぼ例外なく行われてきた行事である。お籠りをする子供は、尋常小学校から高等科までの男児で、ムラの鎮守や個人の家の氏神として祀る稲荷様の社殿やその境内などに、一晩、お籠りをするのである。
このお籠りの前に、子供たちはお賽銭を集めて歩いた。自分のムラの各家を廻るほか、周辺のムラにも遠征してお賽銭を集めるものであった。このときには、稲荷様の絵馬を持ち「カンケ、クラッセ」とか「アブラッコ、クラッセ」などといってお賽銭をもらって歩いた。集めたお賽銭は主としてお籠りの際に食べる菓子を買ったり、稲荷様への供え物を買ったりしたという。
この行事は、子供たちだけで夜明かしすることや、お賽銭とはいえお金をもらって歩くということが、教育上良くないとされ、遅くても昭和三〇年代後半には行われなくなっている。この際、小学校やPTAが廃止にかかわったという伝承も県内に多い。