柚の木では、八月一三日から一五日にかけて、大きな農家の家の庭を借りて、盆踊りを行った。第二次世界大戦前のことである。若い者が集まって丸くなり、中央に四斗樽(酒屋のブンヌキ)を置き、これを叩いた音を拍子に踊った。樽のことをタルバンといい、叩く者のことをタルバンハタキといった。タルバンハタキは、二人が向かい合って叩くもので、鉢巻にタスキ掛といった衣装であった。唄もあり「盆が来たのに踊らぬやつは、馬に蹴られて死んじまえ」とか「盆が来たのに踊らぬやつは、犬に喰われて死んじまえ」、「盆のぼたもちゃ、中まで米だ」などという歌詞であった。踊り手は、若い男女で、跳ねるようにして踊ることから「チョッチョビ踊り」などといった。