若宮では、十五夜といってムラの鎮守である若宮八幡神社の祭りを九月一五日に行っている。現在では、当番が注連縄をなって社殿や境内の祠に飾ったあと、集会所を会場にして飲食をするのみの行事で、四人の当番のうち二人は会費集めで、残りの二人が宴会の世話をしている。以前の十五夜の祭りは、若宮で一番大きな行事であった。第二次世界大戦前まで、この行事は三軒一組の当番で行われた。三軒のうち一軒は翌年の当番が見習で参加するもので、二軒が本来の当番である。この二軒の家のうちの一軒の家が会場(ヤド)になった。この祭りでは相撲の横綱の綱のような藁縄を、人が胡坐をかいたような形に作り、この縄の上に茗荷で作った鶴とトウガンで作った亀を飾った物で、若い衆が作った。この飾り物を御膳の上に載せて、ヤドの床の間に飾った。また、ヤドの家で宴会が始まる前に、その年に嫁をもらった者が、この飾り物を膝の上に抱いたものである。宴会は若い衆の宴会と旦那衆の宴会が行われたもので、それぞれ山盛りの米の飯を食べていたという。この米は、前もって、旦那衆は一日なので一人五合、若い衆は二日間行うので一人一升集めたといい、記録には子供たちの分として一人二合半集めたとしている。また、この日には、ヤドの家の柿などをもぎとっても構わないといわれ、子供たちはよく柿を取っていた。現在では祭りの始まる前に当番が八丁注連をなって、境内の祠などに飾る。
4-26 十五夜(若宮)