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代参時期と方法

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 大山講の代参は、大山阿夫利神社の山開きの間に行われる。本来、大山阿夫利神社の山開きは、七月二七日から八月一七日までであったが、宮代町域をはじめとして、四月に代参をする講社が多いことから、明治二〇年代に四月一五日から二五日までを春山として山開きを行うようになった。この結果、四月の春山と七、八月の夏山が行われるようになったのである。なお、現在、春山は四月五日から二〇日に変更されている。
 伝承でも、宮代町域では春山に代参する事例ばかりである。おおよそ、四月上旬の代参であり、一部三月下旬や四月下旬の伝承も散見される。特に桜の花の咲くころとか、苗代を作る前に代参をするという伝承が多い。
 西では、田うないを行っている四月初め、山崎では、桜の花の咲くころで苗代を作る前の四月、藤曽根では、桜の花の咲くころで田の仕事を始めるまえの四月、西原では、苗代を作る前の三月末から四月の代参という。
 また、大山阿夫利神社の山開きを意識した伝承もみられる。若宮の石尊講では、代参を行う日を、大山阿夫利神社の山開きである四月五日以降で代参者の都合の良い日を選ぶとされる。
 大山阿夫利神社の代参は、鉄道を使う事例が多い。多くの場合は、東武鉄道の最寄り駅から東京に向かうか、JR久喜駅から東京に向かうという例もある。東京からはJR東海道本線の平塚駅に出た。しかし、昭和二年に小田急電鉄の伊勢原駅が開業してからは、新宿駅経由で伊勢原駅に出ることが多くなっている。
 柚の木の大山講の例では、二泊三日の行程で代参を行った。電車で行き平塚で降りて、平塚からは約四里といわれた道を地下足袋で歩いて神社まで行った。夕方には御師といわれる神官の家に着き泊まり、翌日参拝する。神社参拝も、以前は山の上まで登ったが、中腹までで帰ることも多かった。神社から降りると、御師でお札をいただき、江ノ島、鎌倉の観光に向かう。二日目は江ノ島に泊まって翌日帰村した。若宮の石尊講では、電車で伊勢原まで行き、ここからバスで神社まで行った。神社では御師の世話になり、お札を揃えてもらうほか宿泊もした。翌日には江の島を観光して帰村した。現在は自家用車で日帰りしてしまうことも多い。東粂原の大山講では、代参を五人くらいで行った。電車で行き平塚駅で下車して、田んぼの中の道を歩いて神社まで行ったものである。須賀の金剛寺の大山講では、代参を四人で行った。以前は御師と呼ばれる神官の家に泊まったが、熱海温泉まで足を延ばして宿泊をすることもあった。