嫁入り道具は晴れ着から野良着まで一生困らない分の衣類全般や、箪笥などの生活必需品などを持っていった。養蚕が盛んであったころは家で生糸を取り、機で織って晴れ着を縫ったり、木綿の反物を縫って野良着などにして、嫁入りのために用意した。そのほか、布団なども持たせなくてはならないので、家や年代によって違いはあるものの、嫁入り道具をそろえることは実家には大変なことであった。特に戦中戦後の配給制のころは物が無く、年頃の娘がいる家では少しずつ手に入る物をそろえたり、切符を譲ってもらいそろえたという。
嫁入り道具の一例
(昭和初期) 桐箪笥・桐の下駄箱・タライ・洗濯板・鏡台・針箱・裁縫道具・裁ち板・張り板・布団
(昭和二四年) 桐箪笥・桐の下駄箱・タライ・洗濯板・鏡台・針箱・ミシン・衣桁・布団
荷送りが持ってきた嫁入り道具は、デイ・ヒロマや縁側に並べて親戚や近所の人に披露された。そのため桐箪笥の引出しには着物を入れ、鍵を掛けず自由に引出しが開けられるようにして送った。
切戸では、嫁入り道具を見にきた近所の人には簡単なもてなしをした。
足入れの場合はごく身の回りのものを運ぶだけで、本祝儀のときに嫁入り道具を整え、荷送りをした。