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念仏

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 本膳が終わると喪家では念仏で使う鉦を持って近所を鳴らして回る。その合図で近所のおばあさんたちが集まり、仏壇のある座敷で鉦を叩きながら、念仏をあげた。百万遍のように大きな数珠を車座になって回す所もある。
 沖の山の場合、念仏は十三仏で、「ふどう(不動)しゃか(釈迦)もんじゅ(文殊)ふうげん(普賢)ぢぞう(地蔵)みろく(弥勒)やくし(薬師)かんのん(観音)せいし(勢至)あみだ(阿弥陀)あしく(阿閦)だいにち(大日)こくうぞう(虚空蔵)なむあみだー(南無阿弥陀)なむあみだー なむあみだんぶつ なむあみだー」というもので、これを一回唱え終わるとマッチ棒を置いて、一三本になると終わった。
 国納のある家では、華蔵院から十三仏の描かれた掛け軸と鉦と数珠を借りてきて念仏を行ったという。そして、どこの地区でも念仏のあとは黄粉のぼた餅を出し、「ご馳走になるのが亡くなった人への供養だ」といった。また、町内には真言宗の寺院が多く存在するが、宗派にかかわらず念仏を上げる。
 喪家では念仏をあげてくれた人へのお返しとして、本膳で敷いた葬式まんじゅうより小さめのまんじゅうを三個、あるいは団子五、六個、黄粉のぼた餅二個、風呂敷やタオルなど、地区によってさまざまなシキモノ(引物)を渡した。
 須賀上では、念仏にはけんちん汁に甘く炊いた油揚を一枚のせたものを出した。
 川島では現在も月念仏と称し、毎月念仏を上げる行事を行っている。先祖の供養と念仏の稽古を兼ねている。

5-34 川島の月念仏