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田植えの服装

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 田植えは、稲作を行う農家にとって節目となる大切な行事であり、同時に、田の神を迎える神事でもある。そこで、冬のあいだに仕立てた野良着を下ろし、身も心も新たにして仕事に臨んだ。また、田植えは、「結い」と称して親戚や近所同士が助け合って共同で行われたので、来たての嫁にとっては顔見せの場となる。したがって、服装にも十分気が配られたものである。
 嫁は、大柄な紺絣のノラジバンを着て紺のモモヒキをはき、メリンスの半幅帯を「やの字」に結んで締めた。また、「嫁さんはお太鼓結び」といい、一年目には広幅帯をお太鼓結びにする者も多かった。
 嫁のノラジバンは袂(たもと)袖であり、これに赤やピンクや白の欅を掛けた。また、筒袖の場合でも「伊達の欅」と称してお洒落のための欅(たすき)を掛けたものである。
 半幅帯や広幅帯は、赤い柄を染めた華やかなもので、これを大柄の紺絣に締めた姿は遠くからも目立ち、嫁のいることが一目でわかった。帯の上には絣の前掛けを掛け、前掛けの紐と欅の色と合わせるとおしゃれであった。腕には甲掛け付きのウデヌキをはめた。