野良着の準備は、冬のあいだに行われた。女性たちは、農繁期に備えて働き手分のノラジバンやモモヒキを仕立てたもので、春の足音が近づくと夜なべに追われることも少なくなかった。また、一年間着て傷んだ野良着は、つぎをあてて繕われた。
農家の婚礼は、農閑期にあたる冬のあいだに行われることが多く、嫁は、ノラジバンやモモヒキをはじめ、広幅帯、半幅帯、前掛け、コシマキ、ウデヌキ、ハバキ、襷、手拭などの野良着一式を持参し、これらを田植えに着用した。着替えを含めて三組から四組持参する者が多く、中には絣や紺の反物を持参する者もあった。こうした風習は、昭和三〇年代前期まで続いた。また、嫁いで二、三年は、野良着が不足をすると実家で用立ててもらったものである。