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モモヒキ

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 モモヒキは図13のような形態で、男女の区別はない。布地と脚が密着して足運びが軽く、水田の仕事に重宝されることから、タウエモモヒキ、タモモヒキとも呼ばれた。木綿の紺無地で仕立てられ、一反からは三本を取ることができる。型紙を取って家で仕立てることが多かったが、足袋屋であつらえることもあり、洋品店では既製品も売られていた。
 モモヒキで最も傷む部分は、膝であった。そこで、仕立てる際には内側から布地を当てて補強をした。また、モモヒキは水田で長いあいだはいていると、膝から下がタッチブ(水田の水垢)で褪色し、布地も弱くなる。特に、ドブッタはタッチブが多く、褪色が早い。そこで、褪色が進んだモモヒキを膝上で切り、下の部分を新たに縫って継ぎ足した。ただし、このようにするのは女性のモモヒキに限られた。理由は、女性のノラジバンであれば継ぎ目が隠れるが、男性のノラジバンは身丈が股上を隠す程度で継ぎ目が見えるからである。

図13 モモヒキ(逆井 秋間氏所蔵)