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前掛け

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 女性は、野良仕事をはじめ家事を行うときも常に前掛けを離さなかった。
 野良仕事の前掛けはノラマエカケとも呼ばれ、着物を仕立てた残りの紺絣で縫われた。水田では、丈が八寸から一尺の一幅前掛けが用いられ、これをオカ仕事に兼用する者が多かった。また、オカ仕事には、丈が一尺六、七寸の前掛も用いられた。中には、水田、オカともに丈の長い前掛けを用い、水田に入る際には前垂れを紐に絡めて短くする者もあった。これらの前掛けには、赤やピンクや白のメリンスで縫った幅一寸くらいの紐を付けた。
 冬には、一幅半の前掛けも用いられた。これは、一幅物に比べて着物を広く覆うので、その分寒さがしのげたのである。終戦後には、市販のサロン前掛けが広く普及した。