出産は、ヘヤと呼ばれる奥の部屋で行われた。ヘヤの畳を上げて布団を敷き、ゴム布とぼろ布を広げ、その上に寝て出産をする。ゴム布は産婆が持参し、これを敷いておけば布団が汚れずにすんだ。ぼろ布は家で準備され、これに油紙か新聞紙を縫い付けておいた。
出産がすむと、T字帯に木綿綿(もめんわた)をちぎってのせ、さらに布と脱脂綿をのせて股間に当てた。脱脂綿は出産後の消毒にも必要なので、必ず準備しておくようにした。
出産の汚れ物は、「オテントウサマにあてるものではない」といい、裏のヤマ(屋敷林)に穴を掘って埋めた。その上からは、薦(こも)を被せておいた。穴を掘る場所は、センダツサン(先達)の指示にしたがった。