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漬物

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 漬物は、日常のおかずはもちろんのこと茶受けや酒の肴としても重宝されたので、いつでも出せるようにしておくことが主婦のつとめとされた。
 ダイコンをぬか漬けにしたたくあんは漬物の代表格であり、ほぼ一年を通して食べられるようたくさんの量が漬けられた。6-16のようにダイコンを吊して干し、しんなりと曲がるくらいになったらぬかと塩を振りながらシトコガ(四斗樽)に漬け込む。その際には、甘みづけに干した柿の葉を入れる家もあった。四斗樽一本には約一〇〇本のダイコンを漬け、これを二樽から三樽漬けて翌年の秋まで持たせた。塩の分量は口開けの時期によって異なり、早めに食べる分は一樽を三升とし、夏を越す分は五升とした。

6-16 たくわん用のダイコン干し(金原 S家)

 ハクサイは割って陰干しをし、これを四斗樽へ塩漬けにした。その際には、風味づけに昆布やユズ、唐辛子を入れる家が多い。ハクサイの塩漬けは春を過ぎると酸味が強くなるので、これを油で炒めてから醤油をかけて食べた。醤油に砂糖少々を加えたり、ゴマ油を垂らすとよりおいしくなった。ただし、秋葉様(秋葉神社)を信仰する家では、秋葉様がハクサイの油炒めを嫌うことから炒めずに煮て食べたという。
 夏野菜のキュウリやナスは、塩漬けやぬか漬けにされた。また、キュウリの塩漬けが残ると、これをぬかで古漬けにして保存し、逐次出しては水の中で揉んで塩抜きをしてから食べた。
 梅干しはご飯の腐敗防止になるので、弁当には欠かせぬものとされた。梅雨時に収穫した梅を塩漬けにし、水が上がったところで赤ジソを加える。そして、土用に三日三晩干すと梅干しができあがった。
 漬物の保管場所には日の当たらない涼しいところが選ばれ、母屋や物置の北側にオロシ(庇)を張り出して、この下に保管する家が多かった。また、ダイドコロや物置の一角を囲って味噌部屋とし、ここに味噌、醤油、漬物を保管する家もあった。