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川魚

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 日常のおかずが野菜中心であった時代には、川魚がたんぱく質やカルシウムを補う貴重な栄養源となっており、田んぼの用水堀やオトシ(落)、古利根川やその支流河川では川魚漁が盛んに行われた。中には、船を所有して漁を行う者もあったという。笠原沼のホッツケ田(掘上田)には、オヤボリ(親堀)へ通じるオトシが筋状に掘られており、ここでは毎年秋になるとカイボリ(掻い堀)が行われた。カイボリは、オトシを堰止めて水を掻い出し、くぼみに潜む魚を手ですくい捕る漁である。捕れた魚は、フグザルと称する大笊に入れて堀に沈めておけば春まで生かすことができた。
 川魚の種類は、フナ、ザッコ(雑魚)、鯉、ウナギ、ナマズなどである。また、田んぼではドジョウやタニシが捕れ、古利根川やその支流河川ではジョレンで川底をカッパク(掻く)とシジミがたくさん捕れた。
 フナやザッコのような小魚は、火であぶってから図3のようなベンケイに刺して乾燥させ、逐次焼いたりダイコンと煮て食べた。また、小魚の甘露煮は正月料理につきものとされ、昆布巻きを作る際にはその芯に小魚を入れた。

図25 ベンケイ

 鯉は、三枚におろして肝を取り除いてから薄く切り、アライ(洗い)にして酢味噌をつけて食べた。また、コイコク(鯉濃)にもした。肝は薬になるので、生のまま飲んだ。
 ウナギは、裂いて肝を取り除き、これを白焼きにしてから砂糖醤油で煮て食べた。ただし、ウナギを裂くには技術が必要なので、ブツ切りにして煮ることも多かった。頭は、鉈で細かく砕き、これを団子に丸めて醤油煮にしたり油で揚げて食べた。肝は、鯉と同じく薬になるといわれるので、生のまま飲んだ。
 ナマズは、ぶつ切りをてんぷらにしたり砂糖醤油で煮て食べた。また、裂いて骨を取り除いてからてんぷらにすることもあった。頭は、鉈で細かく砕いてから味噌とつなぎの小麦粉を加え、これを団子に丸めて油で揚げた。
 シジミは、味噌汁の身に用いられた。
 ドジョウは、水に入れて泥を吐かせてからドジョウ汁や醤油煮、卵とじなどに調理された。ドジョウ汁は、鍋に油と生きたドジョウを入れて蓋を閉め、火にかける。そして、暴れるドジョウが静かになったところで水を入れ、刻みネギと味噌を加えて煮る。ドジョウやシジミは「コン(根)の薬」と称して心臓に良いといわれたので、盛んに捕って食べたものである。
 タニシは、殼ごとゆでてから身を取り出し、味噌煮にした。