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 昭和三〇年ごろまでは家でオチャコセ(お茶こしらえ)を行う家が多く、自家用にするほか余剰を販売もした。
 茶の木は畑や家の境に植えられており、五月末ごろに茶摘みが行われた。摘んだ葉はセエロで蒸して笊にあけ、粗熱を取ってから莚や叺(かます)の上で揉む。そして、水分がある程度抜けたところでホイロ(焙炉)に移し、仕上げの手揉みを行う。ホイロは納屋に設置され、ここで炭を起こして、上に和紙を張ったジョタン(助炭)をのせる。この中に茶を入れ、両手で撚ったり広げたりしながら糸のような細い茶に仕上げたのである。途中で和紙が乾いたら、糊を刷毛で引いて和紙を張り足し、焦げるのを防いだ。茶揉みは男性の仕事であり、非常に暑いので、上半身裸になって汗止めの鉢巻を締めた。できあがった茶は一斗缶に詰めて貯蔵され、逐次茶筒に小出しをした。
 こうしてオチャコセが終わると、その後は麦刈り、田植えと続き、農家は多忙を極めた。