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葬式の料理

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 葬式では、組内の男衆が道具作りや帳場、寺との交渉などを行い、女衆がオカッテバン(お勝手番)と称して料理作りを担当した。大人数の料理を作るにはダイドコロの設備だけでは足りないので、外にも竃を据えて煮炊きを行い、シマダイの上で料理の材料を整えたり盛り付けを行った。
 本膳は、黒漆塗りの猫脚膳にオヤワン(親椀)、シルワン(汁椀)、オツボ(壺)、オヒラ(平)で一組となり(図34)、猫脚膳はのちに会席膳へと変わった。オヤワンには、ご飯を盛る。ご飯は白米飯で、最初に一口程度を盛り、必ずお代わりをしてもらう。理由は、「一膳飯は仏飯(ほとけめし)」といわれるためである。シルワンには、豆腐の味噌汁かけんちん汁を盛る。オツボにはヒジキと大豆の煮物を盛るが、のちにはツボまんじゅうと称してまんじゅう一個を盛るところが多くなった。オヒラには、ガンモドキか生揚げの煮付けを盛る。また、姫宮では、里芋、レンコン、ゴボウ、ニンジンなどの煮しめを盛って油揚一枚を載せるところもあり、この場合には生揚の煮付けを皿に盛った。そのほか、コンニャクの酢味噌がけや豆腐の冷や奴を皿に盛って出すところもあり、西原のT家では酢味噌作りに限っては男性が行うものとされていた。

図34 葬式の本膳

 葬式後には年寄り衆が集まってお念仏を行い、このときにはぼた餅二個と団子五個が一人ひとりに配られた。弔いのぼた餅は、黄粉をつけるものと決まっていた。