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屋根と棟

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 農家は草葺の寄棟屋根が多い。四方に雨水が流れ落ちるように低い軒だったが、採光のため軒を少し切り落として板や瓦やトタンで庇を出すようになった。
 棟は竹簀巻きの棟と瓦棟が見られる。棟はいたみやすい屋根の頭部を保護するためのものである。竹簀巻きは頭部に屋根材を半円形に積み上げ、鞍茅を置いた上に木の皮を被せ簀状に編んだ細い竹や竹を細く割ったもので巻く形式である。瓦棟は、丸瓦を半円形に積んだ屋根材の上に半円に沿って数段被せたものである。
 棟端の納まりには屋根材を刈り込んで装飾的な意匠を施している家がある。町域では「水」や「寿」などの字をやき込んだものが見られる。水の字は火災除けのおまじないであり、寿の字は福を招き家の繁栄を祈る縁起ものである。
 棟の上に土間の煙などを外に出す煙出しを設ける家もある。草葺屋根は火災に対しては無力であるから、人びとは屋根にこうしたおまじないを施して守っていたのであろう。

6-37 屋根(郷土資料館 旧加藤家)

 屋根裏は藁や茅などの置き場として活用されたり、古くなった神社や寺院でいただいた札を俵や袋などに入れて保管する家もある。また、鳥屋と称して棚を作り、鶏を飼う例もある。