かつては独立した風呂場というものは少なく、土間の一角に風呂桶を置くだけのものが多かった。下が土間であったので、水がこぼれないように風呂桶の脇にタライを置き、そこで手足の汚れを落としてから風呂に入った。風呂桶に水を入れるのは子供たちの仕事であった。水道の普及する前には井戸の水を利用したため、風呂は井戸に近い場所に設けていた。また、家によっては外風呂を建てている。
西粂原のある家では、風呂に水を運ぶのは学校から帰って来てからの子供の日課になっていた。バケツで何回も水を汲んで運んだ。風呂の燃料は屋敷林から木を切って割り、薪にして一年間使用した。今では昔の一年間分の燃料で一〇年間はもつ。これらの作業は農作業が暇な冬場の仕事であった。