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燃料

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 燃料としてはスミ(炭)のほかに、マキや藁などがある。藁は最も経費がかからずよく燃える。一一月ごろ、家の回りにある杉やハンノキの木に藁を束ねたものを、その木を中心に井桁式に積み重ねておくと、上の方の藁束が雨を防ぎ、通気性もよく乾燥も早いので、四月ごろには燃料として使える。乾燥した藁は使う分だけ土間の端に置き、それ以外は土間の二階などに積み上げた。
 マキは主として風呂の燃料などによく利用される。一般的には、田や家の回りにある雑木・桑枝などを使った。八月半ば過ぎに切り落とし、物置の庇の下などに積み重ね乾燥させて保管しておく。
 スミはケシズミ(消し炭)を使ったり、一俵あたり一〇〇円、二〇〇円のザクズミやビンチョウ・ナラ・クリなどのスミを購入したりして都合した。しかしケシズミが一番利用されていたようだ。ケシズミというのは、風呂を焚いた後や煮炊きした後などに出たスミを別の入れものに移し、一旦水につけた後に乾燥させたものをいう。これをスミビツに入れ保管し、使う。
 マッチは大正のころから使用したが、大変貴重品なため、点火の場合はツケギを使用した。これには板に硫黄が付着してあり、竃やイロリのオキ(火種)があればすぐに点火するので便利であった。マッチが常用されるようになったのは、昭和三〇年代に入ってからである。このころになると燃料もソダやマキに変わり、風呂にはナラやカシなどが使われるようになった。