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上棟式

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 棟木を取り付ける儀礼で、柱が立ち並び家の形が出来上がると大安など吉日を選んで行われる。棟木は午前中に取り付けるものとされている。式場の正面には祭壇を設置し、そこに、供え餅・洗米・塩・御神酒・尾頭付きの魚・野菜などの供物のほか、後に棟木の打ちつけられる幣束と棟札を据える。そのほか上棟式の終了後に撒かれる四方固めの餅や小さな餅なども供えられる。
 棟にはヘイグシを三本・五本・七本などと奇数本立てる。ヘイグシには、黄・青・赤・白・黒の五色の布を付ける。そのほか扇・幣束・女性の化粧道具を赤白の水引きで飾り付ける。女性の化粧道具とは、紅・白粉・鏡・櫛・カモジであり、それに針を含める。化粧道具の付いたヘイグシは、棟梁が持ち帰ることになっている。
 ムネアゲには、親戚、組合の人、職人など大勢の人が集まる。建主はお供え餅を作り親戚の人は御神酒・赤飯・投餅などを持って来る。

6-41 上棟式(関根氏所蔵)

 ムネアゲには、建主、親戚の人、職人が屋根に上がる。供え物はジマツリと同様で、そのほかにヒグシを立てる。ヒグシには次のような伝承がある。
 昔、宮大工がお宮を作っていた。そのときお宮の前方のオカイという柱が短くて、建前にならなかった。それで、家に帰って奥さんに話したら、「それでは枡を作りなさい。上、下に枡を作って組めば体裁が良い」といった。それで、枡を作ったら、柱がいい按配に落ち着いた。しかし、奥さんに教わって建前ができるようになったというのでは一大事だというので、奥さんを殺してしまった。ところが、奥さんを殺してしまったので、魔がさして建前にならない。それで、女物の櫛、針、鏡などの七品一組を付けたヒグシを作り、奥さんを祀って建前ができたという。
 屋根の上では、棟梁が祝詞を上げる。この後、皆で御神酒を飲んで、四方に餅を投げる。これを四方固めといい、カシラが行うことが多い。それから、屋根に上っているほかの者も投餅をする。

6-42 上棟式(西原 S家)

 屋根から降りると祝宴になる。この祝宴では、始めるとき、中締め、最後にカシラが木遣りを唄う。
 カシラは木遣りを始めるときに、「では、一つお祝いの声をさせてもらいます」という。その木遣りの一例は次のとおりである。
  アーヨーイ ヤアールテエー (コレワノセー ヨーヨイヤラセエー) ヨーヨー (ホイ)
  目出度目出度 (アーレワノセー ヨー ヨイヤラセー) ヨーヨー (ホイ)
  若松様にて (コレワノセー ヨーヨイヤラセー) ヨーヨー (ホイ)
  枝も栄ゆるテー (コレワノセー ヨーヨイヤラセー) ヨーヨー (ホイ)
  葉もしげますテー (コレワノセー ヨーヨイヤラセー) ヨーヨー (ホイ)
  建て納めお祝いテー (コレワノセー ヨーヨイヤラセー) ヨーヨー (ホイ)
  お家繁盛末長くテー (コレワノセー ヨーヨイヤラセー) ヨーヨー (ホイ)
 最後の木遣りが終わると、「では皆さんお手を拝借」といい、三、三、一で手打ちをして、祝宴が終わる。
 祝宴が終わると、棟梁を家まで送り届ける。これを棟梁送り、あるいは大工送りという。