ビューア該当ページ

農道具の販売

643 ~ 645 / 772ページ
 農道具が売れるのは春先と秋の収穫期であり、特に春先には農繁期に備えて農道具を買い求める客が大勢訪れた。荒物屋で扱う農道具には、被り物、雨具、履物といった着用具や、水田の除草に用いるタコスリ、脱穀調整に用いるクルリ棒、箕、莚(むしろ)、笊(ざる)などがあるが、農作業の機械化が進んだ現在では除草や脱穀の用具は姿を消した。着用具は現在も売られているので、梅喜商店では毎年春先になるとキャラバンと称して自動車に着用具や日用品を積み、農家回りを行っている。
 以下、梅喜商店がこれまでに扱った農道具について、その種類や仕入れ先を紹介する。
 *菅笠 栃木県藤岡町で作られ、現地まで仕入れに行った。
 *編み笠 越谷市で作られたものを仕入れた。付属品に油紙のカバーがあった。
 *麦わら帽子 春日部市は麦わら帽子の主産地であり、かつてはここから仕入れていたが、近年ではお洒落用の帽子が主流となったので、代わって栃木市の問屋から岡山県産の麦わら帽子を仕入れている。また、近年は農園フードと称するつば付きの布帽子や、麦わら帽子に三角布を付けたハンムギ(図11)の人気が高い。
 *シバ蓑 イネ科の芝草で編まれた蓑で藁蓑(わらみの)より軽く、雨も良く弾く。蓮田市黒浜山や千葉県流山市の農家で作られ、現地まで買い付けに行った。

図11 農園フードとハンムギ

 *ショイタ 雨天に背負う長さ一メートルくらいの半茣蓙(はんござ)で、これに油紙を付けて販売した。農家では、半茣蓙の表面に油紙を縫い付け、内側に紐を付けて背負った。半茣蓙は栃木県藤岡町で作られた。また、油紙はショイタに縫い付けるほか出産時の敷物ともされたので、季節を問わず店に置いていた。
 *合羽 ビニール製の合羽は開店当時からあり、現在は上着とズボンを一組として販売している。
 *手甲 甲掛けの付いたものと、ウデヌキと称する筒状のものがあり、現在は後者が主流である。布地は、黒無地のほかにチェックや花柄もある。
 *履物 ゴム底の地下足袋は開店当時から販売され、現在も需要が高い。また、昭和五〇年代からはゴム製の田植え足袋や田植え長靴も販売するようになった。
 *牛馬の装具 耕うん機が普及する以前は農耕に牛馬を使用しており、当時はハモ、クツゴ、シリカイ、荷鞍などの牛馬の装具を販売した。
 *クルリ棒 麦打ちや豆打ちに用いるクルリ棒は、アタマ(回転軸)と打穀部のみを販売し、農家でこれに竹の柄を付けた。
 *タコスリ タコスリボウともいい、水田で稲の間をこすって草を取り除く道具である。
 *箕 割竹の芯に藤の皮を編み込んだもので、千葉県八千代市で作られたものを仕入れた。
 *莚 春日部市武里に莚編み専門の業者がいたので、ここから仕入れた。
 *笊 一斗五升や二斗入りの笊を、久喜市の籠屋(竹細工職人)から仕入れた。