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蚕道具の販売

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 宮代町や杉戸町の農村部では戦前まで養蚕が盛んであり、春蚕がはじまる前には荒物屋に蚕道具を求める客が大勢訪れた。蚕道具には、次のようなものがあった。
 *エビラ カイコの飼育や上蔟に用いる四角い籠。篠竹で編まれたシノエビラと、割竹で編まれたタケエビラがあり、シノエビラは茨城県から仕入れた。タケエビラは、久喜市の籠屋から仕入れた。
 *蚕座紙 エビラに敷くハトロン紙で、春日部市の問屋から仕入れた。
 *蚕網 蚕座を拡張したり蚕糞の掃除に用いる網で、糸網と縄網がある。糸網は綿糸の網に渋をかけたもので、蚕の成長に合わせて目の異なるものが数種類ある。また、縄網は藁縄で編まれ、上蔟(じょうぞく)を控えた五齢の蚕に用いられた。
 *薦 稲藁で編まれた薦(こも)。蚕をマブシヘ上蔟させる際に、その敷物とする。栃木市の農家で作られたものを仕入れた。
 *マブシ 戦前の一時期、栃木市の農家から藁マブシを仕入れて販売した。しかし、藁マブシはたいてい農家で編まれ、のちには養蚕組合を通じて改良マブシや回転マブシを購入するようになったので、荒物屋で扱うことはほとんどなかった。