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季節商品の販売

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 荒物屋の商品には、正月や盆、夏季や冬季に限って販売される季節商品がある。
 正月前には、神棚に供物を供えるための木皿やロウソク立てを販売する。三宝は、一般家庭ではほとんど使われないので、販売することはない。また、お宮は終戦後の一時期販売しただけで、すぐにやめてしまった。若水汲みの手桶や杓は正月に欠かせぬもので、開店当時から販売を続けている。ただし、その材質は木製からブリキ、アルマイトと時代によって変化し、近年では若水を汲む風習が薄れて需要も少なくなっている。
 年始用品には、手拭や半紙、白砂糖がある。かつては、年始の挨拶には手拭が欠かせぬものとされ、ていねいな家はこれに半紙二帖を付けた。荒物屋では手拭を紙袋に入れ、「御年賀」と書いて販売をした。また、半紙二帖を付ける場合は、これを三つ折りにして水引を掛け、その間に手拭を挟んだ。白砂糖は、目方を量って袋に詰めてから化粧箱に入れた。化粧箱のサイズは、三キロ入りから一〇キロ入りまである。かつては年始の手土産といえば白砂糖が定番とされたので、正月前には連日白砂糖の梱包に追われた。また、数こそ少ないが現在も白砂糖を求める客がいるので、四キロ入りの化粧箱(7-18)を常備して注文に応じている。

7-18 砂糖の化粧箱


7-19 店頭に並ぶ盆商品

 盆前には、色紙で作られた菊や蓮の盆花、馬の足や供え膳の箸に用いる麻ガラ、盆棚に敷く茣蓙、盆棚に張る小手縄、盆棚の竹に飾る色紙、墓の花立てに用いる青竹、線香、盆提灯など、さまざまな盆用品を販売する(7-19)。
 盆提灯には、先祖迎えや先祖送りに点すこんばん提灯や、三盆提灯と称して新盆から三年間吊す提灯がある。また、昭和二〇年代までは多くの家が盆棚に行灯(あんどん)を点したので、これに用いる灯明皿や灯芯も盆用品として欠かせなかった。線香は、盆に限らず年間を通して販売されるが、特に需要が高いのは盆や彼岸の時期である。
 夏季に販売される商品には、蚊取り線香、幌蚊帳、蠅帳、殺虫剤、蠅取り紙などがある。幌蚊帳は折り畳み式の小さな蚊帳で、子供が昼寝をする家に被せる。蠅帳や殺虫剤、蠅取り紙は、蠅が出始める春先から夏にかけて販売される。
 冬季に販売される商品には、懐炉灰(かいろたん)と懐炉器(かいろき)、豆炭行火(まめすみあんか)などがある。