ある家のおとっちゃんがお伊勢参りに行ったと。昔は歩いてお伊勢様まで行くので一五日から一か月もかかったそうな。
この家には女の子がおったと。女の子のお母さんは早く死んでしまったと。女手のないおとっちゃんは後妻をもらったそうな。昔は継母とも呼んだ。おっかあは自分の子供でないので、女の子が邪魔でいなければいいと常々思っておった。
そこで、おとっちゃんが伊勢参りに行くと聞いて、いないうちに女の子を釜ゆでにしてしまおうと思った。裏山の奥の方に釜を持って行き、水を入れ女の子をその中に入れ、蓋をして重い石を乗せて燃やし始めたと。一日中燃やしたので、女の子は死んでしまったと思ったそうな。
おとっちゃんがお伊勢様から帰って来て、女の子はどこにいるかと聞いたが、おっかあはどこにいるかわからないと答えたと。おとっちゃんは夢中になって探し回った。山の奥の方に釜が見えたので、釜の上の重石を取り蓋を開けると女の子はお伊勢様のお礼を手に持ったまま座っておったと。お伊勢様の御利益で女の子の周りだけ水になっていて火傷もせず無事助かったと。
おっかあは自分のした事が悪かったとすごく後悔し、おとっちゃんにあやまり、その後は子供を可愛がり一家が仲良く楽しく暮らしたというお話です。