須賀の真蔵院には、身代り薬師というものが祀られています。その縁起によると、昔、伊藤修理大夫光重という者が無実の罪のために北条時氏の軍勢に討たれました。光重の首をもったその軍勢が須賀の地にさしかかると、にわかに光重の首が重くなりました。不思議に思い確かめると、光重の首ではなく薬師の首にかわっていました。伊藤の家に尋ねると、光重は傷一つ受けていませんでした。薬師の霊験に感じ入った時氏は、ただちに光重の罪を許しました。それとともに、この霊験のある薬師を鎌倉に迎え入れようとしましたが、どうしても重く動かすことができませんでした。
しかし、ある夜、須賀の領主の形辺左衛門尉が夢のお告げを受けて薬師のお堂を造ったところ、綿のように軽く持ち上げることができ、その首を移すことができたそうです。