1 | ||
友 月 2 | ||
交 風 3 | ||
霞山人題 | ||
神風や伊勢の風雅の流をくめる野口 4 | ||
雪蓑氏は武の北葛飾郡高野のさとの | ||
豪農にして早く家務を孝子某ニ委ね | ||
七世多少庵の〓を嗣き悠々風月に | ||
嘯詠し復余念なき好士也こたひそか | ||
中祖と仰くへき一世多少庵秋瓜居士か | ||
百回忌にあたれるをもて居士か名月の | ||
吟におこりて五十員を聯ねはた諸家の | ||
月の詠をもとめて手向草となし併て二世 | ||
波静已下南枝鬼吉竹樹琴松に到れる | ||
世々の嗣号者の冥福を祷らんとの挙 | ||
あり嗚呼冷骨百年の後にして秋瓜の | ||
名を今の世に表すもの人素より居士か | ||
俳徳の孤ならさるニ由るへしといへとも抑雪蓑 5 | ||
その人のことき斯道ニ厚き嗣号者を得 | ||
たれは也今や集なるに及ひ予ニ訂正 | ||
を請はるゝニ閲しよりて玉兎集と題し | ||
聊ゆゑよしを記す事しかり | ||
明治三十三年仲秋 | 松浦羽洲 | |
名月やはしめて高き秋の空 6 | 秋瓜居士 | |
庵にもこゑをこほし行雁 | 雪蓑 | |
手のひまに採た薬の目を分て | 永機 | |
ことわりたりぬ振舞の酒 | 机芸 | |
橋になる迄は一里のワたし也 7 | 素石 | |
柳のしける雨のしは/\ | 琢我 | |
□□は鶴の文處さへ夏しらす | 其鳳 | |
とほい處から寄て来た□ | しける | |
ほとこしに闌用米も出し拂 | 宇山 | |
五十四郡を見はらしの丘 | 高甫 | |
贅沢をそれは夫と限もなし | 竹夫 | |
をりには神もうらきるゝ数 | 五柳 | |
あの時のにくい詞かおき土産 | 鼡年 | |
きらいな鰒はくふに及はぬ | 松二 | |
短檠(1)の明りのもとに崖継て | 箋浦 | |
音する蓮もから/\の月 | 善風 | |
古堂もまたあたらしき寄附の札 | 採花 | |
かはりたきは町分限なり | 美城 | |
投下錢の野ををかしくもかけ巡り | 清雅 | |
大傘を日和にもさす | 風□ | |
松の聲おさへて花の智恩院 8 | 鳳羽 | |
いつこはあれと爰の弥生 | 柳生 | |
定紋を雛の袖に染なして | 碧海 | |
幼子まてもならふ礼請 | 亀遊 | |
恩愛のふたつとちらか重いやら | 三河 | 石芝 |
分前よくもとふ□□ | 應雅 | |
さそはれし誘ひかへしの船遊 | 羽後 | □風 |
ひいたやうなりこれは恋風 | 渉名 | |
寝處はもぬけの蝉のから衣 | 須磨 | 霞城 |
軽龍のうはさ空てなかりし | 尾張 | 藤庵 |
おき鳥も挨拶いうて状ひとつ | 加賀 | 交来 |
坐敷掃出せ看経の内 | 尾張 | 其彭 |
虫籠を粧ふ房の露まふれ | 〃 | 竹涯 |
持てもせぬほと秋草を折る | 〃 | 二道 |
たま/\に衛士も非番の月今宵 | 加賀 | 賢外 |
何やら彼やらうたふ大聲 | 尾張 | 鴎渚 |
長崎は阿闌陀町や高麗町 9 | 加賀 | 居中 |
飛直に音なし敷地したたか | 美濃 | 山士 |
袖の下つかふは今の流行にて | 駿河 | 以□ |
たてた落首もむたな御治世 | 大坂 | 霞遊 |
壁ひとへ宗旨ちかひの報恩講(2) | 豊前 | 友村 |
しのふたよりそ雪もふれ/\ | 尾張 | 小□ |
すゝ掃に拾うた文か用にたち | 〃 | 可洗 |
鼡にくむも時にこそよれ | 〃 | 左城 |
月早く黒豆飯も焚上り | 加賀 | 甫立 |
朝まて冷のとゝくさゝなみ | 海山 | |
よきほとにうてハ砧のおもしろし | 讃岐 | 其道 |
旧跡めくり気の合た友 | 尾張 | 栄枝 |
□継てさかり花の末まさり | 〃 | 羽洲 |
なほいく久し結構な春 | 甲斐 | 守拙 |
碑 面 10 | ||
住すてゝあたら庵や山さくら | ||
朝日からおもひかけなし郭公 | ||
名月やはしめて高き秋の空 | ||
揚簀戸のひとり下りけり雪の暮 | ||
無為 | 秋瓜 | |
東京下谷入谷町正洞院に基あり | ||
其傍に句碑あり | ||
柴の戸や月を肯なる建處 | 二世多少庵 | 波静 |
水のおとも月見る友と更にけり | 三世 | 南枝 |
月静夜すから竹のしつくかな | 四世 | 鬼吉 |
雪少し見ゆるや月の遊ふほと | 五世梅年庵 | 竹樹 |
名月や粉はかり残る莨入 | 六世 | 琴松 |
月の出て山皆こちら向にけり 11 | 東京 | 其鳳 |
とんはうの羽も臨きけり夕月夜 | 凰羽 | |
雨の月たまる手にもとりけり | 素石 | |
見し月の雫まとめて露しくれ | 永機 | |
名月やひと夜もちきる秋の空 | 梅年 | |
月はれて先これまての雲ミかな | 静雄 | |
月こよひ掃除とゝきし小家哉 | 採花 | |
さかいしミは過てはなれてけふの月 | 清雅 | |
ことの葉ハおもひ/\や月ひとつ | 花朝 | |
有明る月の外なし利根の空 | 千畝 | |
百年の松は残念よ月の宿 | 機一 | |
十かへりの松のにほひや軒の月 | 箋浦 | |
望の夜となりぬ月日の立安き | 竹夫 | |
端居(3)してはるゝを待や月の雲 | 碧海 | |
ふけて迄客の出入や盆の月 | 馬琴 | |
名月や仰けは遠き一むかし 12 | 琴月 | |
木に草に露のにほひや月今宵 | 蕉楓 | |
月の雲かれ是なしに通りけり | 菊分 | |
けふの月誰か掌の玉ならむ | 巴笑 | |
汐先の殊にあかるし月の川 | 素正 | |
名月の仰けは寒きひかりかな | 兎月 | |
過さりし今宵したハレ月の宴 | 東風 | |
もゝとせの松の影さす月夜哉 | 酉水 | |
波際をはなれて月の光かな | 夫明 | |
名月やこゝろ/\の晴くもり | 笑波 | |
暁の海しつかなり秋の月 | 木水 | |
碁のおともやみけり月の影さして | 福司 | |
ふ二の雪見添て晴し朝の月 | 逸鯉 | |
月ひと夜丸き世界のかゝみかな | 覚齋 | |
いにしへはしらす今宵の月見哉 | 桂花 | |
望過て夜毎ちかふや月の寂 | 鼡年 | |
月に雲かゝる迄とや橋のうへ 13 | 史遊 | |
明月や宵のくもりは疵てなし | 眉香 | |
名月のねかひは丸う叶ひけり | 武蔵 | 師洞 |
名月のさしけり庵の疊数 | 蓼洲 | |
昼はここへ来た事もなき月見我 | 海山 | |
月ひと夜話尽しもせさりけり | 浅水 | |
あめの月筆にものいふ斗也 | 干嶋 | |
なつかしくおもふや庵の窓の月 | 月美 | |
名月や障子につつる花芒(4) | 形外 | |
黙つては居られす月の山はなれ | 琴聲 | |
漁人の笛すさみけり海の月 | 孤月 | |
松風の少しあれかしけふの月 | 應雅 | |
樹のかけをよけて月見の莚かな | 川月 | |
水まても眠らて月の光かな | 金雪 | |
名月や誰かためにうつ遠砧(5) | □山 | |
月の庭松は植たき木なりけり | 静濱 | |
山高ふ濱は細りて后の月 14 | 秋艶 | |
端居する人か客らし月の宿 | 柳洲 | |
百とせの手向や月の花すすき | 善風 | |
誰か家も依怙なく照やけふの月 | 安房 | 伯志 |
三日月のゆふへは過て星月夜 | 上野 | 峨琴 |
うこくとて皆見にたつや月の雲 | 羽後 | 瞳風 |
月の雲近つきかねて消にけり | 如名 | |
名月や院に召さるゝ琵琶法師 | 千之 | |
月のよき庵や萩垣すゝき垣 | 豊秋 | |
光りまけて退くやら早し月の雲 | 月静 | |
海の月いまや出んとするところ | 石狩 | 墨雨 |
仰きし顔にこたへて月の冷 | 北水 | |
月の坐や海からはこふ汐ニ雲 | 柳川 | |
坐をしめて茶は静也雨の月 | □振 | 如雲 |
軒にては風情添ゆるや月の雲 | 加賀 | 交来 |
訪かしの門かな月に戸もさゝす 15 | 居中 | |
三日月やしら露少し雰少し | 賢外 | |
名月や鳥居くゝりに天王寺 | 甫立 | |
月清く高きは松のくらゐかな | 能登 | 竹臺 |
海のおと昼しつまりてけふの月 | 三寅 | |
明月やさわにうつる松の影 | 越中 | 美杉 |
収りのついた空なり小望月 | 箕山 | |
燈臺のもとに明るし雨の月 | 西蘭 | |
明月やさゝなみつくるかいつふり | 兎文 | |
名月や料帋(6)硯のおきところ | 友寿 | |
月雲に入るやしハらく水の音 | 越後 | 枕月 |
梟(7)は気つよひ鳥よ森の月 | 丈芭 | |
名月のふけて秋しるあゆミかな | 文琪 | |
からすまて寝られぬものかけふの月 | 山齋 | |
念佛を申人ありけふの月 | 芹處 | |
明月や門のなか□も九十九折 | □山 | |
名月やこれはとおもふ山はなれ 16 | 晴雲 | |
黒谷の鐘に用なき月夜かな | 西京 | 逸外 |
十六夜は雨にくつれて茶臼山 | 培屋 | |
とてもなら位置よくかゝれ月の雲 | 大坂 | 貞英 |
月夜にも其たくみある花坐かな | 支仙 | |
くさの戸や行もかへるも月の人 | 桜守 | |
松なくはぬれもせまひに月の庵 | 霞遊 | |
かけものゝ月に交しぬ雨ふた夜 | 北叟 | |
はつ月やあるをかきりの蚊遺草 | 須磨 | 霞城 |
名月の姿や見るものさはるもの | 播磨 | □花 |
月の出や松にすこむひとあらし | 笠雅 | |
雨のふる度に磨けてけふの月 | 美作 | 愛蔵 |
月夜毎かはりけり名も趣も | 尾川 | |
昼雨に寝てもとりけり月の客 | 備前 | 峨峰 |
月さして松の枝ふりかはりけり | 静月 | |
もとの座へもとらぬもあり月の客 17 | 阿波 | 雪野 |
芒野(8)やゆれるあたりへ月の出る | □薫 | |
十六夜のやみを見よとや梺の灯 | 蟻城 | |
貯への出来る豆腐や後の月 | 五徳 | |
□かりに寺まて行むけふの月 | 鯉有 | |
山はなれ見て坐につくやけふの月 | 讃岐 | 真海 |
足ることのはしめは細し三日の月 | 兎外 | |
月の松聲をとむれは露光る | 松琴 | |
雨の月窓きり燈のしつか也 | 蓬雨 | |
かゝやきは夢てありしか雨の月 | 有楽 | |
入り舟も追風なきの月見かな | 其道 | |
飛々に寒ひ雲あり後の月 | 伊豫 | 蘭暁 |
窓の竹月のしをりと成にけり | 梅應 | |
おし切た上をやくなり月見舟 | 豊前 | 友村 |
鳥はみな雁てあれかし月の空 | 鷹居 | |
明月や雨遠からぬ星のいろ | 如山 | |
法会すむあとをてらすや松の月 18 | 里鶴 | |
名月や寝つかぬ鳥の数をしる | 筑後 | 楓隆 |
秋深し明ても光る月と水 | 伯耆 | 聴水 |
満汐に成てわかるゝ月見かな | 出雲 | 友川 |
明月やいつ□あけて松のいろ | 仙木 | |
とてもならかさも脱ませけふの月 | 和川 | |
名月や□のさゝなみ稲の露 | 好一 | |
庵に見し月や夜明けて□□の□ | 曲水 | |
つか/\と半迄来て橋の月 | 尾張 | 羽洲 |
晴てある国もあらうに雨の月 | 美岳 | |
松かけの外なくもかなけふの月 | 竹涯 | |
月しるや山遠しともおもハれす | 其彭 | |
千石といふ野はひろし月の露 | 荷庵 | |
いさよひのやみの境や汐明り | 可翠 | |
舟の灯の海へは□す后の月 | 栄枝 | |
明月のうかみて清き小川かな 19 | 採芝 | |
名月や□身にうける小盃 | 左城 | |
月も又けふのことなり東山 | 鴎渚 | |
名月に背く葉もなし芋畑 | 凍雲 | |
岩鼻(9)や月をくたきてかへる波 | 蘭濱 | |
とち風の来てちらせしそ月の雲 | 小藤 | |
月澄て人皆仰くはかりなり | 可洗 | |
名月やわたれはおとのする流 | 二道 | |
丸うなるまてはおもハす后の月 | 東友 | |
名月やくらきところに釣香炉(10) | 三河 | 石芝 |
人よりも先にねふりぬ月の松 | 桂史 | |
明月や手もとに菊の影ほうし | 可水 | |
さてこそとおもふあたりや嶋の月 | 杜堂 | |
名月や水は器に素直なる | 遠江 | 木潤 |
いさよひや人も猶豫のある夕 | 駿河 | 雪香 |
十六夜や波ひとかへし二かえし | 以□ | |
ものかけへかくれし寂や秋の月 20 | 和翠 | |
淀舟や時あやまたぬ廿日月 | 飛水 | |
名月や里に自然の山と水 | 芝桜 | |
海のもの揃うた外や月の芋 | 眉泉 | |
うき雲や月はをり/\あたらしき | 甲斐 | 水西 |
雨の干ぬ柳のくらしけふの月 | さくら | |
月の宴ひけてもとりて窓の月 | 覃〓 | |
夜は月の三日にたたす□の聲 | 桂圃 | |
姨捨やふけてむかしの月の寂 | 守拙 | |
阿武隈やくまなくてらす月の川 | 伊豆 | 生居 |
明月やとこへかくれし山の雲 | 相模 | 宇山 |
さひしくはなき夕くれや月の宿 | 信濃 | 孝心 |
秋もまた浅きしるしや薄月夜 | 美濃 | 山士 |
うける手にあたるてもなし月の雨 | 伊勢 | 耕雨 |
ほとゝきす三日月はまた山の端に 21 | 雪蓑 | |
庵あたらしく夏にとりつく | 羽洲 | |
芳しき芥をなつかしミ人心 | 石芝 | |
きのふのことの是非ハさためす | 霞城 | |
蓬莱(11)にならへる春のはつ暦 | 洲 | |
いくつかけても□浪速なりけり | 蓑 | |
丈山の撰にもれた詩仙にて | 城 | |
かゆいところもかかて其まゝ | 芝 | |
又してもしのひ損ひ逢そこね | 蓑 | |
鳥は物かはともいへぬ月 | 洲 | |
うら生の西瓜ころつく畑尻 | 芝 | |
残春しのきに誕生寺から | 城 | |
つかひよき筆は残らす簣に巻て | 洲 | |
いたゝいて来た御垢付きる | 蓑 | |
改革にあつかる人は皆若手 22 | 城 | |
百年前の記録一筥(12) | 芝 | |
あれ丈か氏子の寄附の花ならん | 蓑 | |
のとかなやうて冴る瀧道 | 洲 | |
しハらくは拾ひもあけぬ薄し角 | 芝 | |
磨くこゝろにそまぬ従者也 | 城 | |
廣い間を望み/\ていく□ | 洲 | |
庭の池にも□□□翡翠(13) | 蓑 | |
筑摩なら鍋をかさねん□入にて | 城 | |
うしろめたしや鋲打の駕 | 芝 | |
道をうち届過たも小さひしく | 蓑 | |
降らすにこたへをほす時雨会 | 洲 | |
豆腐には去き□ひのき月夜さし | 芝 | |
きぬた轉は沈むに三嶋江 | 城 | |
貧福のふたつをかしき秋なれや | 洲 | |
みんな大きな聲の市人 | 蓑 | |
只さへもほこりの目たつ塗障子 23 | 城 | |
あたらしのしはに膾(14)ちよつほり | 芝 | |
米の字を扇に書り祝なり | 蓑 | |
花の教は花の真中 | 洲 | |
献上の象引てゆく春の日に | 芝 | |
汲飲させる瓶の花酒 | 城 | |
はつ月に光すりあふ小笹かな | 鳳羽 | |
へりし□さをかへりミる秋 | 雪蓑 | |
嶋人のまとゐに雁のつはさして | 羽洲 | |
まつ間久しく豆腐かたまる | 羽 | |
ちょい/\と来て夕立の逃て行 | 蓑 | |
市に□のはぬるはかり也 | 洲 | |
草切における天窓は誰もなし 24 | 羽 | |
きく事たけは聞か肝要 | 蓑 | |
行燈か今宵の閨(15)の番らしき | 洲 | |
秤にかけてみたき心根 | 羽 | |
雪の中米山越をいつの間に | 蓑 | |
師走に青ひそらか一日 | 洲 | |
入るよりも出るには速ひ銭のあし | 羽 | |
甘いからいもしつた顔つき | 蓑 | |
月花の神もあるらん餅搗て | 洲 | |
さうちしておく鴬の藪 | 羽 | |
めっきりと春めきワたる雨上り | 蓑 | |
波先ふんたわらんちの味 | 洲 | |
見た事もなんしやもんしやの木の話 | 羽 | |
信心まゐり怠はなき | 蓑 | |
小てうちん消せハ袂に入るやらん | 洲 | |
迷楫透かす軒口の闇 | 羽 | |
中絶た恋ほとむさきものもなし 25 | 蓑 | |
田植しまひの泥手泥足 | 洲 | |
鉢巻に五尺のあやめ引むしり | 羽 | |
よろこひ申は見たのミの世や | 蓑 | |
近ころは京の寺町寺少な | 洲 | |
あとすへりする宿の栗下駄 | 羽 | |
満月をさくる雲もきゝ果て | 蓑 | |
みのりて稲の波もかへさす | 洲 | |
出代た處かいくつも暮の秋 | 羽 | |
とうて□東には縁のない国 | 蓑 | |
塗ものは今にはしめぬ名誉にて | 洲 | |
やかて聲にも叶ふ道服(16) | 羽 | |
百年忌いとなむけふの花さかり | 蓑 | |
古きをしたふ蛙聲々 | 洲 | |
自国柳風連 26 | ||
海ひろし山又高し秋の月 | しける | |
幾萬の民の竃や月今宵 | 華城 | |
くつろきて月より丸き体かな | 風湖 | |
ありかたや今年もここにけふの月 | 松二 | |
月の出にあふや時計も六ッの聲 | 窓月 | |
八景は菊の花なる月見かな | 一星 | |
名月にしつかな舟の往来哉 | 華城 | |
明月や噺て更す草の庵 | 五柳 | |
ふた夜三夜くもりて月の今宵哉 | 梅雨 | |
月と我いはす語らす静なり | 麗玉 | |
月早し秋を定る空のいろ | 春甫 | |
松よしと舞子をめくる月見かな | 竹水 | |
ふりかねてけふに成けり月の雨 | 一友 | |
鴉(17)なく森は社か月今宵 | 圭中 | |
明月や旭も昇る松のうへ | 放牛 | |
くもりなき池に鏡やけふの月 27 | 雲枝 | |
冴るほと寂もつ樹々や后の月 | 我友 | |
名月のひと夜際たつ光かな | 浦舟 | |
月よさにつられて歩行堤かな | 梅隣 | |
月といふ友ここにあり小酒盛 | 登美 | |
旅うれし歌まくらなる須磨の月 | 梅處 | |
しつかさの月におとあり松の露 | 北史 | |
さす月に墨すりこほす疊哉 | 雪鼎 | |
明月や舟から舟へ小盃 | 柳枝 | |
学ひにもよい夜となりぬ秋の月 | 文里 | |
月を見るこころ豊かな今宵哉 | 一聲 | |
居待月松すれ/\に昇りけり | 一宇 | |
廣い世のはなれもの也海の月 | 如流 | |
寝る楽も月にわするゝ今宵かな | 一覚 | |
名月やまはり道して隣まて | 晴山 | |
こゝろ迄はるゝほとすむ月夜哉 | 活美 | |
明月や舟さしとめて小酒盛 28 | 岐路 | |
見ぬ人の何やら恋しけふの月 | 秧村 | |
山寺も山とはいはて海の月 | 柳宇 | |
后の月料理も仕よく成にけり | 琴糸 | |
町裏も往来はしけし秋の月 | 一川 | |
恋人の顔そむけ行月夜かな | 風處 | |
月の出をほめ/\寝るや磯の家 | 柳雫 | |
明月や兀山(18)ひとつあからさま | 榛山 | |
芦原や月の光をよせる波 | 知后 | |
明月やほめて寄りあふ舟と舟 | 蕉年 | |
名月や水にしみ入る松のかけ | 亀遊 | |
冬の夜に似たけしきあり月更て | 松月 | |
我おもふまゝにはならす雨の月 | 松谷 | |
雲ぬけた月付こころよし水のうへ | 柳生 | |
明月やとても明さは山の上 | 高圃 | |
かかる雲退く雲月のけしきかな | 琢我 | |
けふの月心にかかる雲もなし 29 | 七世多少庵 | 雪蓑 |
小金井 | ||
茶の水もこの玉川や花の宿 | 〃 | |
人こゑの絶し上野や郭公 | 〃 | |
はつ秋や古葉拂ひし笹の道 | 〃 | |
酒のあるかきりハさゝん雪見船 | 〃 | |
埼玉縣北葛飾郡高野村 | ||
野口雪蓑 | ||
文音所 | ||
東京赤坂舟後町六十五番地 | ||
野口 〓 |
1 | たんけい 短い燭台。低いあかりのこと |
2 | 親鸞の忌日(一月十六日に行う法会。信徒の家では小豆粥などを作る |
3 | はしい 家の端近くに出ていること。縁側などにいること |
4 | はなすすき はなとすすきのこと |
5 | きぬた 布につやを出すために載せて叩く石の台 |
6 | 使用するための紙 |
7 | ふくろう |
8 | すすきの |
9 | 岩の突端。岩の突き出た部分 |
10 | 書院または床脇に長い飾り緒でつり、どこから香るかわからないように香水をたくもの |
11 | ほうらい 新年の祝いの飾り物 |
12 | はこ |
13 | ひすい かわせみのこと |
14 | なます 魚貝類や獣などの肉を細長く切ったもの。酢であえた食べもの |
15 | ねや 婦人の居間 |
16 | 僧の服 |
17 | からす |
18 | 平地に突き出た山。はげ山 |