解題・説明
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【判型】大本2巻1冊。 【作者】不明。 【年代等】寛永8年(1631)8月刊。[京都か]刊行者不明。 【概要】分類「往来物(古往来)」。異称『庭訓往来抄』『〈新板〉庭訓往来抄』『〈新版(板)〉庭訓鈔』『〈新板〉庭訓抄』。近世を代表する『庭訓往来』の注釈書。『庭訓』本文を楷書・大字・9行・付訓で記し、各状毎にやや小字・12行・付訓で漢字・片仮名交じり文の詳細な注解文を挿入する。巻首序文に「末世ノ諸人、此抄ヲ以テ鏡トナサバ、仁義礼智信ヲ覚エン。猶々愚昧ノ教言ノ為ニ注シ、功能ヲ加ヘタリ。身終ルマデ忘失ナカレ而已」と記すように、教訓的色彩が濃厚で、注解文の多くが考証的ではなく、荒唐無稽な伝承・説話の羅列に近い。例えば、「養蚕」で、養蚕の起源に関する神話を214行、4719字の長文で詳述するように、室町後期の真名文系『庭訓往来註』に比べて注解文が極めて長文である。その一方で、真名文系『庭訓往来註』で丁寧な解説がなされた書札礼や書簡用語について全く触れていない点も大きく異なる。なお、天正10年(1582)書『庭訓私記』が考証するように、本書の注釈文の起源は室町後期に遡ると考えられる。しかしながら、本書は重板・異板や類書を輩出させ、後世の『庭訓往来』注釈書に深甚な影響を及ぼしている。(小泉吉永 記)
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