解題・説明
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【判型】大本1冊。 【作者】置散子書。 【年代等】延宝7年(1679)9月書・刊。[江戸]本屋三右衛門板。 【概要】分類「往来物(古往来)」。冒頭が「抑可相触冨士野狩之事、遠国御家人者不及力処也…」で始まるように、建久4年(1193)の富士野巻狩や曽我兄弟の仇討ちをめぐる古状を集めた往来物。後の古状揃の先駆となった。一般に(1)廻文状(卯月11日付・源頼朝より)、(2)副文状(卯月12日付・蔵人大夫朝輔より右近大夫将監へ)、(3)着到状(5月13日付)、(4)配分状(5月日付)、(5)巻狩の規模・実況を報ずる状(5月日付・藤原正行より平景時へ)、(6)小次郎・禅師房召捕りの執達令状(5月晦日付・平景時より曽我太郎へ)、(7)小次郎等逮捕不能の陳情状(5月晦日付・曽我太郎より平景時へ)、(8)曽我兄弟の狼藉についての問い合わせ状(5月28日付・平景時より安達盛長へ)、(9)曽我兄弟仇討ちの状況並びにその成敗を報ずる状(5月28日付・安達盛長より平景時へ)の合計9通を収録する。延宝7年板は置散子による書道手本であるが、大字・5行の本文のほとんどに振り仮名を付す。 【備考】『富士野往来』の最古刊本は正保4年(1647)板で、以後、本文のみの慶安5年(1652)板・延宝7年(1679)板のほか、頭書に注解や記事を盛り込んだ天明4年(1748)板や文化元年(1804)板などが流布した。(小泉吉永 記)
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