解題・説明
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【判型】中本1冊。 【作者】鼻山人(東里山人)作。歌川貞房画。 【年代等】弘化2年(1845)刊。[江戸]森屋治兵衛(森屋治郎兵衛)板。 【概要】分類「往来物(地理科)」。「都路に、登る枝折の道替て、春は木曽路の八重霞、引渡したる板橋や…」と起筆し、「…春の旅、みじかき筆に書とゞむ、実に光陰の矢立のすみ、腰に弓張坂道も、めでたく越て歓喜(よろこび)の、大津の里と菊桐の、花の都に着にけり」と結ぶ七五調の文章で、江戸を発ち、中山道を辿って板橋・浦和・高崎を経て、碓氷峠を越えて信濃路に入り、鳥居峠を越え木曽谷より美濃・近江を通過して草津で東海道に合流するまでの街道に点在する宿駅を列挙した往来。本文を大字・5行・付訓で記す。本文冒頭で東海道についての教材をまず学び、それより本教材に移るという前提が注目される。頭書に「東海道名所(里程および各地名所案内)」を掲載するのも、あくまで東海道との深い関わりで本教材を学習させようとする意図であろう。 【備考】本書と同名の異本に、向田松三郎書、江戸後期書『木曽路往来』(「むらさきのゆかり、東の江戸の春、いざや都の、花の香を、わが家つとゝ、思ひ出て、渡りはじむる、日本橋…」で始まる)や、天明5年(1785)刊『木曽路往来(〈中仙道〉都路往来)』(「九重の、花をひとへに思ひ立、旅の衣や道芝の、霞関を越路よる、天とぶ雁と打つれて、みちは千里に五十あまり、三つある駅(うまや)馬借て…」で始まる)などがある。(小泉吉永 記)
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