解題・説明
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【判型】大本3巻3冊。 【作者】中村栄成(甚之丞・甚丞)作・書。 【年代等】元禄6年(1693)1月刊。[京都]福森兵左衛門板。 【概要】分類「往来物(女子用)」。異称『〈首書絵抄(絵入)〉女筆四季文章』『四季往来』『女筆四季往来』。万治2年(1659)以前刊『女庭訓』や延宝6年(1678)刊『四季仮名往来』と同様に、四季・花鳥風月の推移や年中行事のあらましを記した往来。全文を大字・5行・付訓の並べ書きで綴る。各月往復24通(上巻1~4月、中巻5~8月、下巻9~12月)の女文で、五節句その他の年中行事故実、四季の風趣などを紹介する。それぞれの月に即した自然の景趣、儀式行事を主題とし、京都の貴族女性が身につけるべき伝統的教養としての影響が顕著である。また、内容の一部に『女庭訓』の影響が認められる。『女庭訓』よりも簡単な記述だが、年中行事故実等についての詳しい説明と図解を頭書に掲げる。この挿絵は貴族風俗を基調とするが、近世風俗に基づくものも含む。なお、本書に前付記事を増補した改題本に、享保6年(1721)刊『女つれづれ色紙染』、嘉永4年(1851)刊『女徒然錦文庫』がある。 【備考】本書(元禄6年板)には別に[京都か]堀重兵衛板もある。なお、本書の筆者は男性であるが書名に「女筆」の語を含む。「女筆」が本義である「女性筆」のほかに、「女性用」の意で用いられていたことを示す証左の一例である。なお、本書と同趣向で作られた男性用の姉妹編である『〈絵入〉年中往来』も本館に所蔵する(411・412)。 (小泉吉永 記)
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