解題・説明
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【判型】半紙本1冊。 【作者】十返舎一九作・序。絵題簽および口絵とも歌川国安画。 【年代等】。文政6年(1823)、錦耕堂序。文政6年1月刊記。文政7年刊。[江戸]山口屋藤兵衛(錦耕堂)板。 【概要】分類「往来物(歴史科)」。江戸書肆・山口屋藤兵衛から出版された十返舎一九作の一連の伝記型往来の1つ。演劇・講談・謡曲・書籍等で人々によく知られていた曽我兄弟の一生を題材とする。まず曽我兄弟(兄・十郎祐成、弟・五郎時宗)の出自や祐重(本文中は誤って「祐泰」と表記。曽我兄弟の父)、祐親(同祖父)、祐高(祐親の父)、祐経(仇敵)とその父・祐継らとの関係に触れ、続いて家督相続の恨みから祐親が祐継を暗殺したことに始まる仇討ち話を展開し、祐経の郎等があやまって祐重を殺したこと、その仇を果たすまでの経緯と曽我兄弟の最期を述べ、最後に兄弟の勇壮武烈さとその名が不朽であると讃える。本文を大字・5行・付訓で記し、末尾を「恐惶敬白」で結ぶ書簡形式を部分的にとる。巻頭に「曽我兄弟氏系」と国安画の口絵(曽我兄弟仇討ち図)、頭書に「武用兵器尽」、巻末に「六曜当日操様之伝」「不成就日」「諸願成就日」等を載せる。 【備考】山口屋藤兵衛から刊行された一連の伝記型往来は、刊記に文政六年と記すも、題簽角書きに「甲申新版」すなわち、文政7年刊行とするものが大半であるため、文政6年に版木が彫られ、文政7年の正月に一挙刊行されたものであろう。このシリーズはいずれも大判の色刷り絵題簽が際立った特徴だが、初期には色刷り絵題簽だったものが、後印本では書名部分のみの題簽に変わってしまう例もいくつか確認されている。なお刊行年は外題角書の「甲申新版(文政7年)」による。(小泉吉永 記)
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