解題・説明
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【判型】半紙本1冊。 【作者】十返舎一九作・序。絵題簽(底本にはなし)は歌川国丸画。口は歌川国安画。晋米斎玉粒(藍庭玉粒・林信)書。 【年代等】文政8年(1825)1月自序・刊。[江戸]山口屋藤兵衛板。 【概要】分類「往来物(歴史科)」。十返舎一九の伝記型往来の1つで、類書中では唯一の女性である神功皇后を題材にしたもの。「夫、我朝者、神国也。神変不思議妙用之有徳故、自異国不能犯之…」と起筆して、神功皇后の三韓、新羅・高句麗・百済征伐のあらましを読み物風に書く。日本が不可侵の神国たることから述べ、その昔仲哀天皇が筑紫熊襲征討の時神託を信用せず平定できずに崩御したが、その后・神功皇后は懐妊中でありながら勝利を祈願し、軍勢を指揮して戦地へ赴き、神の加護によりついに三韓を平定したこと、さらに、凱旋後、皇后が誉田尊を筑紫で出産したこと、その後新羅が再び反乱を起こしたが、それを鎮圧して三韓統治を実現したことを語り、国家泰平は神国の余光として尊むべきであると諭す。本文を大字・5行・付訓で記す。巻頭口絵に国安画の「神功皇后、三韓を平治し給ひ、筑紫帰陣の図」を掲げる。また、歌川国安画の色刷り絵題簽に「三韓平」の3文字を出し、その上方に「朝鮮国之記、同儒仏之始、日本来貢之始、朝鮮之国語、異国土産、異国冠帽」と記すように、頭書に、朝鮮略史や朝鮮語、異国土産物に関する記事(「朝鮮国之記」「朝鮮儒仏始」「日本来貢之始」「朝鮮乃国語」「異国土産」)を載せる。さらに最終丁の頭書には本文と無縁の生活関連の記事(鼠・蚤・蝿を去る方法)を付す。 【備考】文末に「此続雖有之、于此留筆、嗣編追而可著…」と本書の続編をほのめかすが、未刊に終わった。(小泉吉永 記)
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