解題・説明
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【判型】大本2巻2冊。 【作者】中村栄成(甚之丞・甚丞)作・跋。 【年代等】元禄6年(1693)12月跋・刊。[京都]源兵衛ほか板。 【概要】分類「往来物(消息科)」。1カ月往返2通、1年12カ月合計で24通の準漢文体書簡(上巻1月~6月、下巻7月~12月)で、各月に即した自然の景趣、年中行事や儀式等を列記した往来。上巻冒頭を「春甫之万福、四海相均加兆、毎家祝、万民呼泰平、其声淳和也…」と起筆する本文を大字・6行・付訓で記す。いわば、古代・中世より伝わる京都の貴族的教養として綴ったもので、本館所蔵の『女筆四季文章』(194~196)の男性版に相当する。すなわち、本書は準漢文体ながら、扱った題材は『女筆四季文章』とほぼ同様である。ただし、頭書には本文要語の図解を掲げるのみで、『女筆四季文章』の如き詳しい注釈を一切付けない。 【備考】作者跋文に「実語(教)・童子(教)・庭訓往来の如きは、今古幼学の門戸なり。予、一日、一歳進返之簡書を綴りて、題して「年中往来」と曰う。書肆、一閲、梓に鏤むを請う。故に、画図を雑(まじ)えこれに値す」と記す。なお、底本の刊記の書肆は明らかにもと3人であったものが右端の1人が削除されていることから後印本であることが分かる。(小泉吉永 記)
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