解題・説明
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【判型】大本2巻2冊。 【作者】「天台沙門玄恵撰」と記すが作者不明。五十嵐某書。 【年代等】室町前期、応安5年(1372)以前作。天保9年(1838)9月書(寛文2年(1662)2月刊本([京都]栗山右兵衛板)を天保9年に写したもの)。 【概要】分類「往来物(古往来)」。各月往返2通、1年12カ月で計24通の手紙文を収録した古往来。連歌・和歌・喫茶・仏事・遊戯・香・習字・管弦等を主題とし、各状に当代の社会生活にかかわる単語集団を含むのが特徴。その内訳は仏教120語、漢学・文学・教養559語、衣食住86語。底本のもとになった寛文2年刊本は大本2巻2冊で、本文を大字・6行・付訓で記すが、底本はそれを忠実に模写したもので、末尾の識語に「此遊学往来は、高岡長崎氏よりかりて写しとりぬ。写すも手ならひのひとつなれば。天保九年長月十二日写畢。五十嵐(花押)」とある。 【備考】もと平井右平旧蔵書には本書のもとになった寛文2年板と同板の『〈尊円流庭訓続〉遊学往来』([京都]袋屋十良兵衛板)が含まれていたが、戦争中または終戦直後までに石川謙氏の手に渡り、同コレクションである謙堂文庫に長く架蔵されてきたが、石川謙の子息、松太郎氏の死去後、東京書籍が運営する東書文庫に移管された。なお、『遊学往来』の古写本には天文5年(1536)書(高野山金剛三昧院蔵)があり、古刊本には寛文2年(1662)刊、[京都]袋屋十良兵衛板のほか、[京都]栗山右兵衛板、[大阪]柏原屋佐兵衛板、[京都]菊屋利兵衛板等がある。特に、近世刊本として、寛文2年板の改題本である江戸中期刊『続庭訓往来』のほか、別系統(異板)の江戸前期刊『遊学往来』3巻3冊本とその改題本の宝永2年(1705)刊『童子諸覚往来』がある。そもそも古写本では「新撰遊覚(学)往来」と呼ばれたように異称が多い点も特色である。(小泉吉永 記)
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