1)自然植生

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 本来、狭山丘陵は人為的な影響が停止された場合、丘陵の大部分がシイ・カシ等の照葉樹林に覆われる環境条件下にあるのだが、現在この丘陵で自然植生にあたるものは、ごく限られた地域のみに見られるモミ林(植物社会学でいうシラカシ群集モミ亜群集)やハンノキ林(植物社会学でいうハンノキ―オニスゲ群集)などだけである。モミ林は谷戸の湿潤な傾斜地に成立し、高木層をモミの大径木が優先している。亜高木層はシラカシ、アラカシ、アオハダ、低木層で目立つ種はヒサカキ、アオキ、アセビ、オトコヨウゾメ、ヤマツツジ、ヤマウルシなどである。また、ハンノキ林はモミ林よりさらに湿潤な場所に見られ、亜高木層にハンノキ、低木層にイボタノキ、ウメモドキなど、林床にはオニスゲ、チダケサシ、チゴザサ、ヒメシロネ、ミゾソバなどが優先する。狭山丘陵で見られるハンノキ―オニスゲ群集は小規模ではあるが、近隣では大変希少である。