1 狭山丘陵産鳥類214種

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 狭山丘陵の鳥類に関する総括的報文は、荻野豊による精力的な調査で124種が記録された「狭山丘陵・狭山湖・多摩湖の鳥」(1971)が初めてである。この記録は、1962年~1970年にかけての調査結果であるが、それ以後荻野は、1980年に多数の観察者の記録も含めた『狭山丘陵の鳥』を自費出版し、その後も新たな記録を追加するなど整理を続け、『雑木林博物館構想』(1986)では18目43科202種を記載している。それ以来、狭山丘陵の野鳥については様々な観察記録が報告されており、その数は動植物に関する調査報告の中で最も多いものとなっている。これら荻野の調査で狭山丘陵の鳥類の出現期や繁殖の可能性等、大まかな生息状況が明らかにされた。このほか東京都立武蔵村山高等学校生物部は、『狭山丘陵動植物調査報告書』(1989)で1981年~1987年までの確認種130種を記載している。その後著者が「狭山丘陵の鳥」(『日本の生物第4巻第4号』1990)において新たに2種を追加し204種、さらに埼玉県環境部自然保護課は『狭山丘陵いきものふれあいの里・自然環境調査報告書』(1995)において2種を追加し、18目46科206種の目録を公表している。今回はその後狭山丘陵およびその周辺で確認された下に記す11種を追加し、18目49科216種のリストを表-6に示した。なお、本来なら215種になるはずであるが、コジュケイが外来種として除外されたため1種減ることとなった。また、併せて今回のリストには野生化したアヒル等の家禽を含む外来種の記録種も掲載した。
表-6 狭山丘陵で記録のある鳥類
No.種 名渡り
区分
繁殖
区分
No.種 名渡り
区分
繁殖
区分
1アビアビアビ56タカタカイヌワシ
2オオハム57チュウヒ
3カイツブリカイツブリカイツブリ58ハヤブサハヤブサ
4ハジロカイツブリ59チゴハヤブサ
5ミミカイツブリ60コチョウゲンボウ
6アカエリカイツブリ61チョウゲンボウ
7カンムリカイツブリ62キジキジウズラ
8ミズナギドリミズナギドリオオミズナギドリ63ヤマドリ
9ウミツバメコシジロウミツバメ64キジ
10クロコシジロウミツバメ65ツルクイナクイナ
11ペリカングンカンドリコグンカンドリ66ヒクイナ
12カワウ67バン
13コウノトリサギミゾゴイ68オオバン
14ゴイサギ69チドリタマシギタマシギ
15ササゴイ70チドリコチドリ
16アマサギ71イカルチドリ
17ダイサギ72シロチドリ
18チュウサギ73ムナグロ
19コサギ74ダイゼン
20アオサギ75タゲリ
21カモカモコハクチョウ76シギハマシギ
22オシドリ77ツルシギ
23マガモ78コアオアシシギ
24カルガモ79アオアシシギ
25コガモ80クサシギ
26トモエガモ81タカブシギ
27ヨシガモ82イソシギ
28オカヨシガモ83ソリハシシギ
29ヒドリガモ84オグロシギ
30アメリカヒドリ85オオソリハシシギ
31オナガガモ86ホウロクシギ
32シマアジ87チュウシャクシギ
33ハシビロガモ88ヤマシギ
34ホシハジロ89オオジシギ
35アカハジロ90タシギ
36キンクロハジロ91ヒレアシシギアカエリヒレアシシギ
37スズガモ92トウゾクカモメトウゾクカモメ
38シノリガモ93シロハラトウゾクカモメ
39ホオジロガモ94カモメユリカモメ
40ミコアイサ95セグロカモメ
41ウミアイサ96カモメ
42カワアイサ97ウミネコ
43タカタカミサゴ98アジサシ
44ハチクマ99コシジロアジサシ
45トビ100コアジサシ
46オジロワシ101ハトハトキジバト
47オオワシ102アオバト
48オオタカ103カッコウカッコウジュウイチ
アカハラダカ
49ツミ104カッコウ
50ハイタカ105ツツドリ
51ケアシノスリ106ホトトギス
52ノスリ107フクロウフクロウコミミズク
53サシバ108コノハズク
54クマタカ109オオコノハズク
55カラフトワシ110アオバズク
渡り区分:留=留鳥、夏=夏鳥、冬=冬鳥、通=通過鳥、迷=迷鳥 繁殖区分:●=現在も繁殖、○=過去に繁殖記録あり、◎繁殖の可能性あり

No.種 名渡り
区分
繁殖
区分
No.種 名渡り
区分
繁殖
区分
111フクロウフクロウフクロウ166スズメウグイスオオヨシキリ
112ヨタカヨタカヨタカ167メボソムシクイ
113アマツバメアマツバメハリオアマツバメ168エゾムシクイ
114ヒメアマツバメ169センダイムシクイ
115アマツバメ170キクイタダキ
116ブッポウソウカワセミヤマセミ171セッカ
117アカショウビン172ヒタキマミジロキビタキ
118カワセミ173キビタキ
119ブッボウソウブッボウソウ174ムギマキ
120ヤツガシラヤツガシラ175オオルリ
121キツツキキツツキアリスイ176サメビタキ
122アオゲラ177エゾビタキ
123アカゲラ178コサメビタキ
124オオアカゲラ179カササギヒタキサンコウチョウ
125コゲラ180エナガエナガ
126スズメヒバリヒバリ181シジュウカラコガラ
127ツバメショウドウツバメ182ヒガラ
128ツバメ183ヤマガラ
129コシアカツバメ184シジュウカラ
130イワツバメ185ゴジュウカラゴジュウカラ
131セキレイイワミセキレイ186メジロメジロ
132キセキレイ187ホオジロホオジロ
133ハクセキレイ188コジュリン
134セグロセキレイ189ホオアカ
135ビンズイ190カシラダカ
136ムネアカタヒバリ191ミヤマホオジロ
137タヒバリ192ノジコ
138サンショウクイサンショウクイ193アオジ
139ヒヨドリヒヨドリ194クロジ
140モズチゴモズ195オオジュリン
141モズ196アトリアトリ
142アカモズ197カワラヒワ
143レンジャクキレンジャク198マヒワ
144ヒレンジャク199ハギマシコ
145ミソサザイミソサザイ200アカマシコ
オオマシコ
146カヤクグリカヤクグリ201イスカ
147ツグミコマドリ202ベニマシコ
148シマゴマ203ウソ
149ノゴマ204コイカル
150コルリ205イカル
151ルリビタキ206シメ
152ジョウビタキ207ハタオリドリニュウナイスズメ
153ノビタキ208スズメ
154マミジロ209ムクドリコムクドリ
155トラツグミ210ムクドリ
156クロツグミ211カラスカケス
157アカハラ212オナガ
158シロハラ213ハシボソガラス
159マミチャジナイ214ハシブトガラス
160ツグミ外来種など
161ウグイスヤブサメアヒル●セキセイインコワカケホンセイインコ
162ウグイスバリケンガビチョウ●カオグロガビチョウ
163エゾセンニュウニワトリコウラウンハッカチョウ
164マキノセンニュウコジュケイ●ソウシチョウ●キホホハッカ○
165コヨシキリハッカンベニスズメカササギ○
ドバト●ホウオウジャク 

1)タマシギ:1979年 東村山市北山公園
2)アカマシコ:1993年3~4月初旬 入間市宮寺
3)オグロシギ:1996年9月8日 入間市大森調整池
4)タカブシギ:1996年9月8日 入間市大森調整池
5)オオマシコ:1996年11月5日 入間市宮町
6)アカハラダカ:1998年9月28日 瑞穂町六道山
7)コアオアシシギ:1999年10月23日 入間市大森調整池
8)ハギマシコ:2000年12月10日 狭山湖
9)シマゴマ:2001年5月2日 狭山湖畔
10)コグンカンドリ:2002年7月20日 多摩湖
11)ヤツガシラ:2003年3月16日 瑞穂町長岡
 
 日本産鳥類は日本鳥学会によって、542種(『日本鳥類目録改訂第6版』2000)とされている。狭山丘陵では、これまでに表-6に示した18目49科214種が記録されており、これは日本産鳥類542種の39.5%にあたる。日本は北の北海道から南の小笠原や沖縄まで、範囲が広くまた環境も多様であるが、狭山丘陵という狭い地域を考慮すると非常に豊富であるといえよう。狭山丘陵は首都圏有数の野鳥の生息地といっても過言ではない。このように狭山丘陵で多くの鳥類が認められる要因としては、野鳥観察者が多く、記録漏れがないよう目が行き届いていることも幸いしていると思われるが、さらに以下のことが鳥相を豊かにした要因と考えられる(埼玉県環境部自然保護課1995)。
 A 貯水池およびその水源涵養林が鳥獣保護区やその特別保護地区に指定され、立入禁止区域となっていること。また、その歴史も長く成熟度の高い森林がまとまって残存していること。
 B いくつかの植生タイプに分けられる広大な森林を中心に、湖沼・湿地・沢・農耕地等の多様な自然環境が集約して現存していること。
 C 市街地や農耕地の広がる武蔵野台地上に浮かぶ緑の孤島として、渡り鳥の中継地になっていること。