3 ヘビ類

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 ヘビ類は7種が記録され、これも狭山丘陵本来の在来種の生息が確認できているものと考えられる。狭山丘陵にある都立公園内の各所を日中に歩き、ヘビ類の目撃を記録した宮﨑豊(2000)によると、総数71回の記録のうち、ヤマカガシが48回(68%)、アオダイショウが11回(15%)、シマヘビが9回(約13%)、マムシが1回(1%)、ジムグリが2回(3%)であったという。この記録は狭山丘陵のヘビ類の個体数の傾向をほぼ反映したものと考えられる。ただし、ヘビ類には潜行性のジムグリや夜行性のシロマダラなど、種によって習性が異なるため、それを考慮した今後の調査に結論を待ちたい。
 事実、ここでは記録されなかったヒバカリについて、筆者は入間市宮寺(2000年6月5日)と所沢市山口(2002年6月15日)等、夜間の田んぼで観察している。シロマダラについても先の宮﨑が瑞穂ビューパーク(2006年4月30日)において夜間に目撃している。シロマダラは、朽木の下などに潜む性質が強く、トカゲ類等の爬虫類を食すヘビで本州以南に生息するが、近隣の丘陵地では確認例が少ないという(埼玉県1996)。近年希少な例として、瑞穂町立六道山公園(2005年10月7日)で2匹同時に発見されている。
 ヤマカガシ、シマヘビ、ヒバカリの3種は、オタマジャクシやカエルが出そろう5月頃の田んぼや湿地に現れ、幼蛇がシュレーゲルアオガエルの卵やアカガエル類の幼生を捕食する姿が観察される。マムシは丘陵内の公園に立てられている「マムシに注意」の看板が必要なほど個体数は多くなく、シロマダラ同様丘陵産ヘビ類としては希少種といえる。アオダイショウは、人家や時には市街地でも見られ、ヘビ類の中では一番都市化に順応できる種である。
 なお、多摩丘陵・加治丘陵等の近隣の丘陵地で確認されているタカチホヘビについては、今後の調査の中で狭山丘陵での生息が認められる可能性があるが、八王子市内で50cm以下の小蛇の死体を収集した金井(1985)によると、タカチホヘビが124匹、アオダイショウが43匹、シロマダラが31匹で、タカチホヘビが圧倒的に多かったという。このことから、タカチホヘビの狭山丘陵での生息にはあまり期待できない。いずれにしろ、関東平野部の低地から台地および丘陵に生息している爬虫類のほとんどの種類が現在も確認されており、地域本来の爬虫類相が現存している数少ない場所として特徴づけることができよう。
 地域的なレベルで減少が著しく保護が望まれる種としては、イシガメ、ヤモリ、シロマダラがあげられる。