狭山丘陵の昆虫類については、1920年代のチョウ類の報告をはじめとして、様々な研究者や機関が調査記録を報告してきた。狭山丘陵の中で昆虫類は、植物・鳥類と共に調査報告例の多い生物相である。しかし、30目に分類されている日本産昆虫のうち、狭山丘陵では19目が記録されているにすぎない。また、目別にみてもトンボ目・バッタ目・カメムシ目・コウチュウ目・ハエ目・チョウ目の6目については、比較的記録種数が多いが、これ以外の目は数種類の記録にとどまっており、他の分類群については今後の研究に期待したい。
狭山丘陵の昆虫類も国レベルと同じように、人の関心を引きやすく種の同定が比較的容易なトンボ類とチョウ類が最もよく把握され、生息種がほぼ解明されたといえようが、他の分類群については今後の研究に期待するところが大きい。一地域においてトンボ類が55種、チョウ類が79種も確認されている(「狭山丘陵産昆虫目録」1995)ことは、狭山丘陵の自然度と環境多様性の高さを端的に示すものといえる。チョウやガ、トンボなどで検討すると、関東地方の低平地から浅い山地の昆虫はほぼ現存しており、そこへ暖地性種が混在している状態となっている。
他には、コウチュウ目がこれまでに768種記録されており、他の昆虫類に比べ調査精度が充実している。山地性の種や関東地方での確認記録がほとんどないもの等、興味深いコウチュウ目の記録が少なくない。