3 チョウ類

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 ここでは研究者や愛好家の多いチョウ類をとりあげ昆虫類の一端を紹介する。表-13に狭山丘陵で記録のあるチョウ類9科80種のリストをあげた。なお、ここでは埼玉県環境部自然保護課(1995)の「狭山丘陵産昆虫目録」に記載された79種に加え、入間市と瑞穂町で記録されたムラサキツバメを追加して80種とした。この中にはクロシジミをはじめ狭山丘陵から絶滅したと考えられる種や、ツマグロキチョウなど希少となってしまった種、また逆に、ムラサキツバメやクロコノマチョウなど温暖化に伴い新たに進出してきた種や増加傾向にある種などが見られる。加えて、ミヤマカラスアゲハ、シータテハ、クモガタヒョウモンなどは秩父・奥多摩方面の山地から飛来した種、アサギマダラも他から飛来した種と考えられている。朝鮮半島より人為的に持ち込まれたホソオアゲハは、1985年頃より所沢市堀之内地内に生じたウマノスズクサの大群落に、複数の人が放蝶したため1989年夏から秋に大発生している。このような様々な形で記録されたチョウ類全80種のうち、現在狭山丘陵に土着しているチョウは65種前後と考えられている。首都40km圏ということを考慮すると良好な環境であるといえよう。
 次に開発が進む低平地や台地・丘陵で、他のチョウよりも早く消滅してしまう年一化性のチョウをとりあげてみる。狭山丘陵の記録種のうち、一化性のチョウは、ミヤマセセリ、ホソバセセリ、ウスバシロチョウ、ツマキチョウ、ミズイロオナガシジミ、ウラゴマダラシジミ、コツバメ、スギタニルリシジミ、オオミドリシジミ、アカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミドリシジミ、クロシジミ、テングチョウ、ミドリヒョウモン、オオウラギンスジヒョウモン、メスグロヒョウモン、ウラギンヒョウモン、クモガタヒョウモン、ミスジチョウ、ヒオドシチョウ、オオムラサキ、ジャノメチョウの23種で、一化指数は28.8%である。
 一化指数とは、そこに生息するチョウ類の内の一化性チョウ類の占める割合をいう。狭山丘陵の場合、落葉広葉樹林に依存するチョウと内陸的乾燥草原に依存するチョウの比率が高いことを表している。また、一化指数が高いことは、逆に多化性の比率が低いことで、照葉樹林に依存する度合いが低く、人為の加わり方が少ないということを表している(牧林功1985)。
表-13 狭山丘陵で記録のあるチョウ類
科 名種 名化性増減科 名種 名化性増減
セセリチョウアオバセセリシジミチョウムラサキツバメ
ダイミョウセセリムラサキシジミ
ミヤマセセリミドリシジミ
ホソバセセリクロシジミ
ギンイチモンジセセリトラフシジミ
ヒメキマダラセセリゴイシシジミ
イチモンジセセリヤマトシジミ
ミヤマチャバネセセリウラギンシジミチョウウラギンシジミ
チャバネセセリテングチョウテングチョウ
オオチャバネセセリマダラチョウアサギマダラ
キマダラセセリタテハチョウコムラサキ
コチャバネセセリサカハチチョウ
アゲハチョウジャコウアゲハミドリヒョウモン
アオスジアゲハツマグロヒョウモン
カラスアゲハオオウラギンスジヒョウモン
モンキアゲハヒメアカタテハ
ミヤマカラスアゲハメスグロヒョウモン
キアゲハスミナガシ
オナガアゲハウラギンヒョウモン
クロアゲハゴマダラチョウ
ナミアゲハクジャクチョウ
ウスバシロチョウルリタテハ
ホソオアゲハイチモンジチョウ
シロチョウツマキチョウアサマイチモンジ
モンキチョウクモガタヒョウモン
キチョウミスジチョウ
ツマグロキチョウコミスジ
スジグロシロチョウヒオドシチョウ
モンシロチョウキタテハ
シジミチョウミズイロオナガシジミシータテハ
ウラゴマダラシジミオオムラサキ
コツバメアカタテハ
ルリシジミジャノメチョウクロヒカゲ
スギタニルリシジミヒカゲチョウ
ツバメシジミクロコノマチョウ
オオミドリシジミジャノメチョウ
アカシジミコジャノメ
ウラナミアカシジミヒメジャノメ
ウラナミシジミサトキマダラヒカゲ
ベニシジミヒメウラナミジャノメ
※化性:○=一化性(23種)、◎=多化性(57種)を表す。
※増減:▽=減少傾向、▲=増加傾向を表す。