今首都圏において里山を維持していくことは大変難しい。まして、本来の農業による利用によって維持していくことなど、不可能のように思える。狭山丘陵は、多くの住民による自然の保護運動やそれに応えた行政、加えて水道局用地の涵養林があったことも幸いし、首都40km圏に広大な緑地が奇跡的に残された場所である。今後はいかにこの広大な緑地を管理し、生物の種の多様性を維持していくかが課題である。
これまで述べてきたように、ここ狭山丘陵では4,000種近くに及ぶ多種多様な動植物の生息が確認され、今なお武蔵野の動植物を温存し続けている。しかし、身近な自然の宝庫としての狭山丘陵も、現状ではいろいろな問題を抱えている。近年になり顕著となってきた動植物に関する諸問題は、高度成長期以降受けた、雑木林の伐採や地形の改変といった自然破壊の行為とはまったく異質のものである。身勝手な盗掘、採集、密猟、また、身勝手な密放流、善意による無知な行為。このような問題は、里山に親しみを持ち身近な自然とのふれあいを求める人が増加するに伴い起きてきた、新たな自然破壊といっていいだろう。
これも都市化という一つの波ともいえようが、この波の防波堤になるのは瑞穂自然科学同好会等、地域の市民団体が地道に続けている自然観察会などの活動による正しい知識とマナーの普及と考える。筆者も地元団体の一員として、その成果を期待し、今後も自然観察会等の普及活動に努めていきたい。