守谷地方の生物

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 茨城県の南部には、広く平らな常総の野が広がり、この豊かな土地に生息する生物たちは、北方系すなわち温帯的なものと、南方系の暖帯的なものとが互に接して分布している。前々頁「暖地性植物分布の境界線」を見ると、北部山地を除いては、ほとんど暖帯林となっている。―・―・―・―線の南には暖帯林ができ、北にはできない。この線から北では温帯林となる。

暖地性植物分布の境界線


日本の森林帯

 暖帯林は照葉樹林(しょうようじゅりん)で常緑で葉の表面がかたくてつやのある木がよくのびる林。温帯林は夏緑樹林で、冬に落葉してしまう木がよくのびる林である。
 茨城県の北部の山地では、コナラ、ミズナラ、イヌシデ、ブナなどが高くのびて温帯林といわれる林ができている。

温帯林(夏緑樹林)


暖帯林(照葉樹林)

 わが郷土守谷町にも、シイ、カシ、クロマツなどの暖帯林が多く生育し、古い歴史をもつ町だけに、木立に包まれた社寺や民家には、数百年の樹齢を数える巨木が見られたが、近年、松の巨木はほとんど見られなくなった。
 守谷駅を降り北へ約一キロメートルほど行くと松並木にかかる。道の両側に胸高周囲一~二メートルの黒松が数十本立ち並び、植栽はおよそ二八〇年前といわれ、平安の昔、平将門が往来した並木ともいわれ、樹勢も盛んである。以前は数百本の黒松が立ち並んでいたといわれたが、現在は少なくなっている。

守谷の松並木

 この松並木の東に、モミが点々と並び、永泉寺の参道に入る。境内には、アカマツ、スギ、シラカシ、ムクロジ、ホウノキ、シダレザクラなどがある。また、下町新田の西林寺境内には、シラカシ、ケヤキがあり、仲町八坂神社には、ケヤキ、イチョウなどがある。
 下町石神の黒松は、胸高周囲、四・四メートルあり、枝ぶりも見事で町の天然記念物に指定されていたが、近年松喰い虫のため枯れ伐採された。
 守谷小学校入口近くに将門城跡といわれる土塁にクロマツの巨木がそびえていたが、これも松喰い虫のため枯れ伐採された。さらに東部には、守谷沼と称する沼沢地があり、コオホネ、クワイ、キカシグサ、ミズハコベなどの草々があったが、数年前干拓されて、現在は少なくなっている。
 町の北部を流れる小貝川畔には、ヨシ、オギ、ハンノキ、タチヤナギ、アカメヤナギ、オオイヌノフグリなどが見られる。土塔長龍寺の境内には、杉の大木が立ち並んでいる。また、将門ゆかり高野海禅寺には、ケヤキ、エノキなどがある。乙子常安院の境内には、胸高周囲五メートルの「開山松」と称する手植のクロマツの大木があったが、松喰い虫のため枯れ、数年前伐採された。
 利根川の堤防及び原野には、カサスゲ、ヨシ、マコモ、ヤナギ、セイタカアワダチソウ、オギ、ハンノキ、クワなどが群生している。